情報量と安心感が魅力のハウスメーカーだが・・・
住宅業界の裏話について伝える前に、住宅業界のカテゴリーについて紹介します。
家を建てる会社を表す言葉には、ハウスメーカー、建築会社、工務店、ビルダー、建築設計事務所などさまざまあります。本書『改訂版「家づくり」は住宅会社選びで9割決まる』では、家づくりの契約を行う(建築請負契約を行う)会社の総称として「住宅会社」、その業界については「住宅業界」という表現を使うことにします。
表向きも含め、こうした注文住宅を担う住宅会社を大別すると、以下の4つになると思われます。
1.ハウスメーカー
ハウスメーカーというのは全国組織で、大手企業です。しかし、実際にはさまざまな組織形態があります。
たとえば私が下請けをしていたハウスメーカーはディーラー制を敷き、地域ごとにディーラー、つまり販売会社を持っていました。それぞれの販社は、1年にどれだけの部材などをメーカーから購入しなければいけないという契約に縛られています。仕入れ量に達しないと、単価が上がってしまうなどのペナルティがあるようです。いずれにしてもハウスメーカーは一大ブランドを掲げて全国展開をし、画一的に同じ商品を扱います。
また、ハウスメーカーは全国規模で情報交換をしているため、情報量が格段に多いことは間違いありません。商品企画、マーケティング、集客など、それぞれのプロフェッショナルを抱えて、研究を重ねています。
たとえば耐震設計一つをとっても、あるハウスメーカーでは、実物大の家屋を自社の設備で実際に揺らしてテストをしています。そうしたことは、それこそ経営基盤が盤石なところでないと無理です。
また組織が大きく、資本が大きな会社は、従来の常識で言えば「潰れない」といった安心感があるのも確かでしょう。アフターメンテナンスのことも考えれば、経営の安定性は非常に重要です。
ただし、皆さんもご承知のように、もはや大手企業は潰れないという時代ではありません。今では業界再編は当然のことで、名前は同じでも全く別の業態の大手企業の傘下になっていたり、吸収合併されたりした会社もあります。そうした資本関係の変化によっても、ますます「家づくり」の本質からは離れて、まさにビジネスになっているというのが特に大手企業の今ではないでしょうか。
しかも、組織が大きい分、細かなところ、つまり現場(施主にとっては少しも細かなことではありませんが)にまでは目が行き届きません。組織が大きい中で、手づくりで家づくりを行い品質を維持していくのは非常に難しいことです。
品質維持、地域密着の両立を図るフランチャイズ系
2.フランチャイズ系住宅会社
フランチャイズ系住宅会社は、基本的にはコンビニなどと同じ仕組みです。フランチャイズ本部が全国各地の中小の工務店を組織化し、システム開発や標準的な住宅商品を企画、技術指導や広報活動までを行います。フランチャイズ本部の開発した商品を加盟店が売る。パンフレットや展示物なども用意され、モデルハウスをどう造るかも指導されます。
各店は独立採算ですが、本部に縛られています。そうした意味ではハウスメーカーの下請けに近いのですが、実際の営業活動や施工は、工務店が地元に密着した強みを生かして行うケースがほとんどです。
部材を一括発注することによる品質の安定とコストダウンというハウスメーカーのメリットと、地域密着の家づくりを大切にする工務店のメリットを掛け合わせたいいとこ取りを標榜しています。
次回は、残り2つのカテゴリーをご紹介します。