顧客用の発注書と業者用の発注書の「数字」が違う!?
随分と前のことですが、現場での打ち合わせ時に、ハウスメーカーの営業マンがファイルを忘れていったことがあり、ついつい中を見たことがあります。するとどうでしょうか。その内容と私たちがもらっている発注書の中身がかなり違うのです。私たちに対して発注された単価と、お客様に請求する単価が同じわけはありません。利ざやを抜くのは当然でしょう。ところがそれだけでなく、たとえば必要な部品や部材の箇所数や個数、あるいは平米数がまるっきり違うのです。
お客様としては、たとえば石膏ボードが何枚とか、壁紙が何平米とか、どの材料が何本といった数量を見積りで見ても、それが適正数量なのかを確認するすべはありません。しかし私たち業者は細かく数量を確認するので、業者への発注数量の方が正しいはずなのです。せこいと言えばせこい話ですが、そうしたことの積み重ねが無視出来ない金額の差になっていくわけです。
不安や疑問が払拭できず、不信感が募る施主
もちろん、お客様とのやり取りの裏側が私たちに知らされることはありません。ですから、こんなことも起きます。
仮にお客様から壁紙の平米数を聞かれたとします。「450平米と書かれているのですが、本当にそれだけありますか?」と聞かれ、実際は450平米ないので、正直に言うのであれば、「いや、400ないはずですよ」などと答えることになります。嘘をついて「はい」とは答えにくいですから、正直に答えるなと言われれば、口ごもるしかなくなります。
どちらを答えても、メーカーとしては不都合です。ですから、「直接お客さんと会話をしないように」という話になるわけです。お客様から質問をされても、「私たちにはわからないので、メーカーさんに聞いてください」ということしか言えなくなるわけです。
施主でありながら、不安に思っていること、疑問に思っていることがあっても、解消することが出来ません。誰も本当のことは答えてくれないのです。お客様にとっては八方塞がりと言える状態です。最初に生まれた不信感は、最後には猜疑心に変わっていきます。途中で誰も救ってくれない、救われるような事態に遭遇することがないからです。
残念なことに、アンケート調査においても、お客様の満足度がいちばん高いのは契約時なのです。そこをピークにして、ひたすら満足度は低下していきます。そんな現実に業界は慣れきっているのです。