前回に引き続き、日本ファンド事件について見ていきます。「会社が勝つためにすべきこと」が今回のテーマです。※本連載は、堀下社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の堀下和紀氏、穴井りゅうじ社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の穴井隆二氏、ブレイス法律事務所所長で弁護士の渡邊直貴氏、神戸三田法律事務所所長で弁護士の兵頭尚氏の共著、『労務管理は負け裁判に学べ!』(労働新聞社)より一部を抜粋し、会社側が負けた労働判例をもとに労務管理のポイントを見ていきます。

パワハラ対策に求められる「問題発生時の迅速な対応」

<勝つために会社は何をすべきか? 社労士のポイント解説>

 

パワハラは、近年、社会的な問題として顕在化してきています。このような問題に対して、会社は早急な対応が求められています。

 

パワハラは、社員の尊厳や人格を傷つける許されない行為ですが、何がパワハラに該当するのかの判断が難しいこともあり、現実問題として、パワハラ防止の労務管理が遅れているのが実態です。

 

職場のパワハラを放置すると、うつ病などの精神疾患の原因となり、労災として認定されるケースが最近多発しています。さらに会社は不法行為責任や安全配慮義務違反などの法的責任を問われることもあります。パワハラ対策には、①パワハラをさせない指導・教育、②問題発生時の迅速な対応の2つがポイントとなります。

 

職場のパワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」(平成24年1月30日職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告)です。

 

「ザ・ウィンザー・ホテルインターナショナル事件(東京地判平24.3.9)」では、「いわゆるパワハラという極めて抽象的な概念について、これが不法行為を構成するためには、質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である」と述べています。すなわち、「パワハラ」でも不法行為を構成し慰謝料が発生するものとそうでないものがあります。

 

前記の東京地裁判決では、慰謝料が発生する基準について、「パワハラを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を総合考慮のうえ、企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用して、社会通念に照らして客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り」慰謝料が発生すると判断しています。

パワハラに該当する具体的な言動とは?

次に厚生労働省が発表した「パワハラの6つの行為類型」と人事院の「『パワーハラスメント』を起こさないために注意すべき言動例」に基づいて、具体的なパワハラに該当する可能性が高い事例をまとめました。

 

[図表]パワーハラスメントの6つの行為類型と具体的な言動

労務管理は負け裁判に学べ!

労務管理は負け裁判に学べ!

堀下 和紀,穴井 隆二,渡邉 直貴,兵頭 尚

労働新聞社

なぜ負けたのか? どうすれば勝てたのか? 「負けに不思議の負けなし」をコンセプトに、企業が負けた22の裁判例を弁護士が事実関係等を詳細に分析、社労士が敗因をフォローするための労務管理のポイントを分かりやすく解説…

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