ロック板の大半がセンターロック方式だが・・・
現在のコインパーキングの主流であるロック板方式は、前章(※書籍参照)でもふれたように、そもそも不正があることを前提に、それを防ぐ目的で設置されるものであって、善良な利用者からすれば、けっして使い勝手がいいとは言えない。そればかりか、駐車場におけるトラブルやクレームの多くはロック板が原因となっている。ロックレス方式は、そのロック板がなくなるということだから、トラブルやクレームの多くも一気に解決されることを意味する。
ここであらためて、ロック板に関するトラブルについて考察してみたい。
一ノ瀬がこのロックレス駐車場システムを開発するヒントとなったのが、運転免許を取得したばかりの娘が発した「ロック板があるとクルマが入れにくいし、降りにくい」という言葉だった。
ロック板方式にはセンターロック方式とフロントロック方式があるが、現在は大半がセンターロック方式であり、運転初心者や駐車が苦手という人にとっては、車室(駐車スペース)の中心に設置されているロック板の存在は心理的な負担になりがちだ。実際、入庫時にロック板に乗り上げる際にアクセルをふかしすぎてクルマをぶつけてしまうのではないかと、不安に感じたことがある人は少なくないだろう。
また、クルマから降りるときにロック板に足を引っ掛けて転倒する事故も起きている。女性のなかには、運転するときはスニーカーなどを履き、クルマから降りるときにはハイヒールに履きかえる人もいるが、ハイヒールでロック板を越えると不安定になり、怖いという声も聞かれる。高齢者や足が不自由な人にとってもロック板は危険な存在となりそうだ。
さらに、クルマのホイールやタイヤがロック板に接触し、傷ついてしまうこともありうる。高級車の場合は深刻なトラブルにも発展しかねない。
そのうえ、ロック板は電気がないと可動できないため、停電になると入庫中のクルマが出庫できなくなってしまう。実際、東日本大震災後の計画停電のときはロック板が下がらないというトラブルが頻発し、アイテックでもその対応に追われたという。
雪の多い地域では、除雪の前にロック板が凍結して下がらなくなる可能性もある。積雪によりロック板が埋まってしまい、どこに停めていいのかわからなくなることも考えられる。
そして意外に多いのが、ゴミ詰まりによるトラブルだ。コンビニエンスストアのビニール袋や、落ち葉、タバコの吸殻などのゴミがロック板に挟まると、取りづらいゴミとなり、見た目が汚らしくなってしまうことがある。
ロック板をなくすことで意外な効用も
その点、ロックレス方式ならば、これらの問題がすべて解消されるだけでなく、利用者にとっては、段差がないので格段に停めやすくなる。運営会社にとっても、駐車場内でのトラブルが少なくなるうえ、掃除もしやすくなるので、いつもすっきりとしたきれいな状態を保てるし、雪国でも機械を使って簡単に除雪ができるといったメリットもある。
しかも、ロックレス駐車場には防犯カメラが標準装備されており、夜間は照明が灯り、カメラで24時間監視が続いているため、ゴミの不法投棄や壁の落書きを軽減する効果もあり、土地オーナーとしては近隣住民に防犯上の安心を提供できる。
このように、ロック板をなくすということは、これまでの駐車場の概念を一変させることでもあり、利用者、駐車場運営会社、土地オーナーの3者にさまざまなメリットをもたらすのである。
さらに、一ノ瀬としても想定外だった、意外な効用も生まれている。
「ロック板がないと、駐車場の敷地が広々と使えますからね。ある駅前の駐車場では、町内会の祭りなどの催しや、災害時の避難所設置にも使えるということで、喜んでいただいています。幼稚園を併設した病院では、夏には駐車場に大きなプールを置き、子どもの遊び場にしていました。駐車場という本来の用途以外にも、いろいろな使い方をされているようです」
利用者に喜ばれる駐車場。それこそが利用率を高め、結果的に高い利益率を生む駐車場になるのではないだろうか。