必要な機能を満たすカメラが見つからない!?
話を少し戻そう。三代澤がアイテックに入社し、ネットワークシステムの開発を進めていたころ、アイテックの社内では、車両ナンバー認識システムの開発が進行していた。一ノ瀬が考えるロックレス駐車場システムを実現するためには、高精細カメラと車両ナンバー認識ソフトからなるシステムの開発が不可欠だった。
一ノ瀬は、当初は市販のカメラを使うつもりでいたのだが、適切なカメラを探しに台湾にまで行っていろいろ調べてみたところ、必要な機能を満たすものがなかなか見つからなかった。USBカメラを使えるかとも思ったのだが、ケーブルの長さなどの問題もあって、やはりこれも難しい。カメラ自体に画像処理能力を持たせたかったので、結局、社内で開発せざるをえなかった。
そのときもまた、一ノ瀬には力を貸してくれる人物との出会いがあった。
「またまた精工舎時代の仲間に協力を仰ぐことになりました。高速での画像処理を可能にする『DaVinci』というプロセッサがあるのですが、それを自由に使いこなせる技術者がいなかったのですね。そんなときに、精工舎にいた技術者と再会し、彼が来てくれたおかげで、カメラも自社開発が可能になったのです。300万画素の撮影素子で撮影した画像や画像処理したデータを送信するコントロール基板など、すべて自社でつくりました」
ナンバー認識カメラを自社開発できたことで、さらにその技術を応用して、防犯カメラも自社で開発している。
ナンバーだけでなく、防犯カメラの画像も自動的に収集
カメラユニットが完成しても、今度は撮影した画像をサーバーに送って保管しなければいけない。そのための後処理も必要になってくる。結局、ナンバー認証システム、すなわちロックレス駐車場システムは、2010年3月にリリースされたあとも、運用上便利なアプリケーションをどんどん付加していくことになった。
「たとえば不正出庫が発生した場合、画像データをはじめ、その時点の状況確認に必要なすべてのデータは、最初は手作業で処理していたのですが、それを自動的に行えるようにするなど、便利機能を順次付加していったのです。駐車場が増えるにつれてデータ量も自ずと増えてきますから、ますます人の手では後処理がこなしきれなくなってきます。ですから、同じシステムでも、機能的にはどんどん進化してきているのです」
不正出庫が発生した場合、どのようにしてその人物を追跡するのか。最終的には警告の貼り紙や陸運局へのナンバー照会など、アナログ的な対応も必要になるが、その前段階まではIT技術が大きくものを言う。そのため、アイテックでは、いかに人手をかけずに必要なデータを抽出できるかを追求すべく、データ処理の効率化を図り、改善を重ねていった。
たとえば、不正出庫をしたクルマはナンバー認識カメラと精算機で検知できるしくみだが、そのときの状況を把握するために、防犯カメラのほうの画像も自動的に収集できるようにした。
「ナンバー認識カメラがあるというだけでも抑止力になりますが、防犯カメラで撮影された画像で顔まで判別できるとなれば、もう逃げようがありませんからね。
さらに、防犯カメラの画像を見れば、その人物が駐車場内でどう動いたかも、ある程度わかります。精算機に寄ったのか、素通りしたのか。その際に精算機をちらっと見ながらクルマに戻ってきたとなれば、精算機があることはわかっていたということです。
不正出庫があった時間帯の画像を手作業で取り出すこともできますが、それも手間なので、必要な情報を自動的に収集できたら便利だなと思ったまでです」
一ノ瀬はさらりと言ってのけるが、開発のアイデアは常に一ノ瀬から発せられるもので、三代澤は、その豊かな発想には頭が下がるばかりだと言う。