今回は、ロックレス駐車場のサービス多様化を促進する「QT‐net」の概要を見ていきます。※本連載では、多数の著作を持つ評論家・パーソナリティとして知られる鶴蒔靖夫氏の著書、『進化するコインパーキング ユーザーファーストで実現する安心・安全・快適な駐車場ネットワーク』(IN通信社)から一部を抜粋し、画期的な「ロックレス駐車場」のシステムを紹介していきます。

会員の利便性を高める「Gポイント」の導入

アイテックのロックレス駐車場システムが設置された駐車場はQT‐netと呼ばれるネットワークで結ばれ、QT‐net倶楽部の会員にはさまざまなサービスが提供される。

 

QT‐net加盟の駐車場を利用するたびにポイントが貯まり、キャッシュバックされるサービスもそのひとつだ。駐車場によっても異なるが、利用料金100円につき1円以上のポイントが付与され、1000ポイントからキャッシュバックが受けられる。

 

しかし、このサービスは、利用者目線で考えると、必ずしも使い勝手がいいとは言えない。なぜなら、100円で1ポイントということは、キャッシュバックが受けられる1000ポイントを貯めるにはコインパーキングを10万円分も利用しなければならないという計算になるからだ。

 

そこで三代澤が率いる開発部では、ジー・プラン株式会社が運営する国内最大規模のポイント交換サービス「Gポイント」を使えるようにしたらどうだろうかと、一ノ瀬に進言した。

 

「いつもは一ノ瀬のほうからアイデアを出されることのほうが多いのですが、『Gポイント』に関しては開発部のほうから一ノ瀬に提案しました。

 

QT‐netのポイントはあくまでもローカルポイントですから、コインパーキングを毎日利用される方ならともかく、たまにしか利用されない場合は、1000ポイントなどなかなか貯まりません。しかも、キャッシュバックサービスしかないわけで、これでは正直なところ、お客様にとって魅力的なサービスとは言い難いでしょう。

 

『Gポイント』はジー・プランが運営する国内最大級のポイント交換サービスで、『Gポイント』に変換したあと、流通系のポイントのほか、『Suica』や『nanaco』といった主要電子マネーや、航空マイルなど、150社以上の提携先各社が展開するポイントにまた交換できるのです。つまり、『Gポイント』を経由して、お客様の使いやすいポイントに換えることができるわけです。お客様の利便性を考えたら、断然、こうした広がりがあったほうがいいですよね」

 

開発部からの提案に対し、一ノ瀬はすぐにゴーサインを出した。利用者の利便性を高めることができるなら、反対する理由は何もないからだ。

 

三代澤はさっそく行動に移した。運営会社であるジー・プランと提携を交わし、2016年9月から「Gポイント」交換サービスをスタートさせている。

 

さらに、2017年5月ごろをめどに、株式会社NTTドコモの「dポイント」による精算を、まずは自営の駐車場でできるようにし、その後、他のQT‐NET加盟の駐車場にも広げていく予定だというから、会員にとっての利便性は高まる一方だ。

ネットワーク対応型への切り替えは、まだ「途上段階」

ポイントサービス以外にも、QT‐netでは、先述したように、クレジット決済によるキャッシュレス精算など、料金の支払い手段も充実させている。

 

こうしたユーザーファーストのサービスを実現できるのは、各駐車場のネットワーク対応精算機とデータセンターをインターネット回線でつないだグローバル・ネットワークシステムがあるからこそだと言える。ロックレス駐車場システムというと、ロック板がないことや遠隔操作だけに目がいきがちだが、ネットワーク化によりさまざまなサービスの可能性が広がっているのである。

 

アイテックでは、各駐車場をネットワークで結び、運営会社の枠を超えた情報連携も可能にしている。これが他社とは大きく異なる点ではないかと三代澤は言う。「精算機などは、スタンドアローンでやっていたら情報連携なんてできませんよね。当社の場合は、データセンターがあるから横のつながりも可能になるのです」創業以来、アイテックが出荷した精算機はおよそ1万台にのぼり、そのうちネットワーク対応精算機が約3000台。さまざまな情報の収集・管理を行うためにはネットワーク対応精算機の設置が必要不可欠なため、アイテックとしては、従来の精算機を置いている駐車場も、すべてネットワーク対応型の精算機およびロックレス駐車場システムに置き換えていきたいところだ。

 

しかし、運営会社としては、従来のものが壊れてもいないのに新しいものに置き換えることには抵抗があるうえ、コインパーキングの場合はなるべくランニングコストをかけたくないという事情もある。そのため、いまはまだネットワーク対応型への切り替えは途上段階にあるようだ。

 

「運営会社のなかには、キャッシュレス精算が可能になり、しかもスマートフォンからも精算できることなど、ネットワーク対応のメリットを認め、戦略的に新しい精算機に置き換えてくださるお客様もあります。でも、おおかたは、使える機械はなるべく壊れるまで使いたいという考えです。ですから、精算機の寿命がこないことには、なかなか新しいタイプの精算機に更新されません。駐車場によってネットワーク化への対応に時間差が出るのもしかたがないのかもしれません」

 

なお、大手駐車場運営会社などは独自のポイント制を設けるなどして顧客の囲いこみをしているところもあるが、個人や中小規模の運営会社がそれをしたくても、インフラなどの設備費がバカにならない。だが、アイテックのネットワーク対応精算機を設置してQT‐netに加盟すれば、運営会社の大小を問わず、キャッシュレス精算やQT‐net倶楽部会員へのポイント変換サービスに対応できるようになる。

本連載は、2017年2月刊行の書籍『進化するコインパーキング ユーザーファーストで実現する安心・安全・快適な駐車場ネットワーク』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

進化するコインパーキング ユーザーファーストで実現する 安心・安全・快適な 駐車場ネットワーク

進化するコインパーキング ユーザーファーストで実現する 安心・安全・快適な 駐車場ネットワーク

鶴蒔 靖夫

IN通信社

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