専用ウェブサイトで売上データ等の照会・検索が可能に
これまで述べてきたように、アイテックでは2009年12月にグローバル・ネットワークシステムを開発し、QT‐netを構築しているが、ロックレス駐車場システムや、のちに紹介する予約システム、そしてキャッシュレス精算や会員向けのポイント変換サービスも、すべてはネットワーク化によって実現したものだ。
アイテックのデータセンターと各駐車場のネットワーク対応精算機はインターネット回線でつながれており、運営会社は駐車場ごとの月々の売上データやクレジット決済利用金額、ポイント発行額などの情報を、専用ウェブサイトでいつでも照会・検索できるようになっている。
[図表1]
また、アイテックは運営会社からの個別の要望にも対応している。たとえば、集計の項目を指定し、それに関するデータを集めてほしいとか、仕様変更の依頼といったものもある。営業部部長の落合正男に話を聞いた。
「自社のホストコンピュータに売り上げデータを直接送信してほしいといった依頼もあります。運営会社さんによっては、自社で使っている他のデータとかたちをそろえ、一括して同じ速度で動かしたいというわけです。その会社だけのオリジナル仕様という場合は、別途に開発料をいただくこともあります。
要は、ナンバー認識カメラやネットワーク対応精算機など、ロックレス駐車場システムに欠かせない一連の機器を設置してから、どれだけのサービスやフォローが提供できるのかが勝負なのです。メーカーといえども、やはりサービス業的な視点は欠かせません」
「リアルタイムデータ」の蓄積がもたらす地域の活性化
アイテックのデータセンターでは、各駐車場の利用状況などをリアルタイムで把握できるだけでなく、それらの情報をデータ化し、データの解析なども行われる。
[図表2]
たとえばコインパーキングの場合、立地によって利用者が少なくなる時間帯があるが、それがデータ化されれば、効果的にディスカウント対応を行ったり、周辺の店舗と提携するなどの集客方法を提供することも可能となる。そうしたリアルタイムデータの積み上げは、地域の活性化にも連動してくるのではないかと一ノ瀬は言う。
「たとえば、コインパーキングにクルマを停めると、近隣の店舗情報やクーポンがユーザーのスマートフォンに送られ、ユーザーがそれらのお店を利用すれば駐車料金サービス券が自動発行される、といったことができれば、駐車場運営会社と地域の商店街のどちらにとっても、顧客誘導のツールになりうるのではないでしょうか。
商店街にロックレス駐車場が1つあれば、そこを中心とした新しいコミュニティが形成されます。当社のネットワーク対応精算機が入った駐車場と、店舗側にスマートフォンなどの端末と専用アプリがあれば、特別な設備費はかかりません」
2014年1月には、提携店舗にスマートフォンを設置し、駐車証明書を読ませてサービス情報をデータ送信する「NETサービス」も開始している。スマートフォンやタブレット端末を含め、これからはネットワークがあらゆる分野でさまざまなサービスの可能性を広げていくことになるだろう。
アイテックが現在、実用化に向けて準備を進めているのが、時間貸し駐車場の予約サービスだ。すでに開発は終了し、2017年2月からテストに入り、3月にはリリースの予定である。
これは、事前予約できることを売りにした「akippa」などのシェアリングエコノミー型サービスとは根本的に異なり、通常のコインパーキングを予約できるという画期的なものだ。このサービスが実現すれば、ロックレス駐車場システムの開発と同様に、駐車場業界にふたたび大きなインパクトを与えることになるに違いない。
アイテックが取り組む予約サービスについては、第5章(※書籍参照)で詳述しよう。