今回は、田や畑などの農地における「評価単位」について見ていきます。※本連載は、税理士・小寺新一氏、不動産鑑定士・税理士・吉村一成氏の共著、『改訂版 税務署を納得させる不動産評価の実践手法』(実務出版)の中から一部を抜粋し、土地の評価でポイントとなる「地目」と「評価単位」について解説します。

「1枚の農地」を評価単位に

宅地以外の地目(農地、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地及び雑種地)の評価単位は、それぞれ次に掲げるとおりです(評基通7−2(2)~(7))。

 

なお、牧場、池沼及び鉱泉地を除き、宅地比準用方式で評価をする土地の評価単位の判定に当たっては、不合理分割について定めた財産評価基本通達7−2(1)の注書が準用されます。

⇒本書「第16不合理分割が行われた場合の評価単位」(106ページ)参照。

 

1 農地の評価単位

 

(1)純農地及び中間農地の評価単位

 

田及び畑(以下「農地」といいます。)は、1枚の農地(耕作の単位となっている1区画の農地をいいます。)を評価単位とします(評基通7−2(2))。

 

(2)上記以外の農地等の評価単位

 

財産評価基本通達36−3に定める市街地周辺農地、同40に定める市街地農地、同40−2に定める広大な市街地農地及び同40−3に定める生産緑地は、宅地の価額の影響を強く受けることから宅地比準方式により評価することとしており、これとの整合性を図るため、評価の単位についても宅地としての効用を果たす規模や形状で評価を行う必要があります。

 

したがって、これらの農地については、上記(1)のように1枚ごとといった評価単位によらず、それぞれを(これら4つの通達に定める農地の区分ごとに)利用の単位となっている一団の農地を評価単位とします(評基通7−2(2)ただし書)。

 

この「利用の単位」とは、一体として利用される土地の範囲を指し、自用の土地であれば、第三者の権利による制約がないので、その全体が一体として利用されるものであり、第三者の権利が存する土地とは区分されます。したがって、自用の土地は、その全体を利用の単位として評価することとなります。また、第三者の権利の存する土地について、貸付先がそれぞれ異なっている場合には、利用についてもそれぞれ異なっているので、同一人に貸し付けられている部分ごとに利用の単位とします。

評価単位となる「一団の農地」の具体例

このように、これらの農地は、利用の単位となっている一団の農地を評価単位とするのですが、具体的には、次のように判定します。

 

イ 所有している農地を自ら使用している場合には、耕作の単位にかかわらず、その全体をその利用の単位となっている一団の農地とします。

 

ロ 所有している農地を自ら使用している場合において、その一部が生産緑地である場合には、生産緑地とそれ以外の部分とが隣接していても、それぞれを利用の単位となっている一団の農地とします。これは、生産緑地は農地等として一定の期間管理しなければならず、また、市町村長に買取りの申出をすることができる場合でも、一定の手続きやそのためにある程度の期間を要するという制約があることによるものです。

 

ハ 所有する農地の一部について、永小作権又は耕作権を設定させ、他の部分を自ら使用している場合には、永小作権又は耕作権が設定されている部分と自ら使用している部分をそれぞれ利用の単位となっている一団の農地とします。

 

ニ 所有する農地を区分して複数の者に対して永小作権又は耕作権を設定させている場合には、同一人に貸し付けられている部分ごとに利用の単位となっている一団の農地とします。

改訂版 税務署を納得させる 不動産評価の実践手法

改訂版 税務署を納得させる 不動産評価の実践手法

小寺 新一,吉村 一成

実務出版

土地評価の基礎知識から特殊な状況にある不動産の評価手法に至るまでの手順を簡潔明瞭に提示。不動産評価の現場業務に直結する評価物件の物的確認や法的利用規制の確認など、不動産評価を的確かつ効率的に進行させるための実務…

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