今回は、土地の「不合理分割」と「限定価格」の関係 について見ていきます。※本連載は、税理士・小寺新一氏、不動産鑑定士・税理士・吉村一成氏の共著、『改訂版 税務署を納得させる不動産評価の実践手法』(実務出版)の中から一部を抜粋し、土地の評価でポイントとなる「地目」と「評価単位」について解説します。

市場価値との乖離がある場合に用いる「限定価格」

不動産鑑定の用語に「限定価格」というものがあります。限定価格は、不動産の併合又は分割をすることによって市場が相対的に限定され、対象不動産の市場価値を乖離(上回る)場合の価格をいいます。そして、限定価格を求める場合の例示のひとつに「経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合」があげられています。

 

[図表]

 

上の図表のような整形で標準的な3,500万円のA土地を不整形なB土地と不整形なC土地に分割した場合、B土地とC土地の単独の正常価格(時価)は、それぞれ2,000万円、1,000万円となるとすると、合計で500万円の価値の減少分が生ずることになります。

 

したがって、A土地を分割してC土地を収用等で買収する場合の鑑定評価額は、A土地の補償を要することをしんしゃくし、C土地の正常価格(時価)1,000万円に価値の減少分500万円を加えた1,500万円が限度となる限定価格となります。つまり、限定価格の考え方をとると、価値の減少分が消えてなくなるわけではありません。

 

「第16 不合理分割が行われた場合の評価単位」で説明した取扱いは、限定価格の考え方からみても合理性があるということになります。

限定価格を求めるケースとは?

<不動産鑑定評価基準>

 

「第3節鑑定評価によって求める価格又は賃料の種類の確定」−抜粋−

 

2.限定価格

 

限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。

 

限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。

 

(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合

(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合

(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合

改訂版 税務署を納得させる 不動産評価の実践手法

改訂版 税務署を納得させる 不動産評価の実践手法

小寺 新一,吉村 一成

実務出版

土地評価の基礎知識から特殊な状況にある不動産の評価手法に至るまでの手順を簡潔明瞭に提示。不動産評価の現場業務に直結する評価物件の物的確認や法的利用規制の確認など、不動産評価を的確かつ効率的に進行させるための実務…

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