登記上ではなく、課税時期の「現況」によって判定
1.土地評価の基本(現況地目)
土地の評価は、まず評価する土地の地目を判定することから始めます。この判定ができないと、評価単位も定まりません。つまり、財産評価基本通達による土地の価額は、原則として宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地及び雑種地の地目の別に評価することになります(評基通7)。
この場合の地目は登記簿上の地目にかかわらず、課税時期における土地の現況によって判定します(評基通7)。
したがって、例えば、「宅地」とは、「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地(登記事務準則68条⑶)」をいいますので、建物の敷地内に設置された自家用駐車場の敷地は「宅地」に該当し、また、農機具倉庫の敷地となっている土地(登記事務準則69条⑶)は、登記簿上の地目が「畑」であっても、「宅地」として評価することになります。
⇒「第52 農業用施設用地の評価」(本書229ページ)参照。
これに対し、家屋を取り壊し、その跡地を月極め駐車場や資材置き場として使用し、あるいは空閑地として放置している場合、登記簿上の地目は「宅地」であっても、現況地目は「雑種地」に該当します。
<一口メモ>
農機具倉庫の敷地となっている土地は、農業用施設用地ではありますが、農地には該当しませんので、「農地等についての相続税の納税猶予の特例」の対象にはなりません。上記のように現況によって地目の区分を行うため、「借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。)の評価」は、財産評価基本通達の「第2節宅地及び宅地の上に存する権利」に定められ、また、「賃借権の評価」は、「第10節雑種地及び雑種地の上に存する権利」に定められることになります。
田、畑、宅地…地目の具体的な判定基準とは?
2.地目の判定基準
地目の判定は、次の不動産登記事務取扱手続準則第68条《地目》及び第69条《地目の認定》の定めに準じて行います(評基通7(注))。
上記1のとおり、土地の価額は、原則として地目の別に評価しますから、地目の判定を正しく行わないと評価単位を誤り、ひいては評価額そのものを誤ることになります。
<登記事務準則>
(地目)
第68条次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
(1) 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(2) 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(3) 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
(4) 学校用地 校舎,附属施設の敷地及び運動場
(5) 鉄道用地 鉄道の駅舎,附属施設及び路線の敷地
(6) 塩田 海水を引き入れて塩を採取する土地
(7) 鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
(8) 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(9) 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(10) 牧場家畜を放牧する土地
(11) 原野 耕作の方法によらないで雑草,かん木類の生育する土地
(12) 墓地 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地
(13) 境内地 境内に属する土地であって,宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。)
(14) 運河用地 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地
(15) 水道用地 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地,貯水池,ろ水場又は水道線路に要する土地
(16) 用悪水路 かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
(17) ため池 耕地かんがい用の用水貯留池
(18) 堤 防水のために築造した堤防
(19) 井溝 田畝又は村落の間にある通水路
(20) 保安林 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
(21) 公衆用道路 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。)
(22) 公園 公衆の遊楽のために供する土地
(23) 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
(地目の認定)
第69条 土地の地目は,次に掲げるところによって定めるものとする。
(1) 牧草栽培地は,畑とする。
(2) 海産物を乾燥する場所の区域内に永久的設備と認められる建物がある場合には,その敷地の区域に属する部分だけを宅地とする。
(3) 耕作地の区域内にある農具小屋等の敷地は,その建物が永久的設備と認められるものに限り,宅地とする。(4) 牧畜のために使用する建物の敷地,牧草栽培地及び林地等で牧場地域内にあるものは,すべて牧場とする。(5) 水力発電のための水路又は排水路は,雑種地とする。
(6) 遊園地,運動場,ゴルフ場又は飛行場において,建物の利用を主とする建物敷地以外の部分が建物に附随する庭園に過ぎないと認められる場合には,その全部を一団として宅地とする。
(7) 遊園地,運動場,ゴルフ場又は飛行場において,一部に建物がある場合でも,建物敷地以外の土地の利用を主とし,建物はその附随的なものに過ぎないと認められるときは,その全部を一団として雑種地とする。ただし,道路,溝,堀その他により建物敷地として判然区分することができる状況にあるものは,これを区分して宅地としても差し支えない。
(8) 競馬場内の土地については,事務所,観覧席及びきゅう舎等永久的設備と認められる建物の敷地及びその附属する土地は宅地とし,馬場は雑種地とし,その他の土地は現況に応じてその地目を定める。
(9) テニスコート又はプールについては,宅地に接続するものは宅地とし,その他は雑種地とする。
(10) ガスタンク敷地又は石油タンク敷地は,宅地とする。
(11) 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場は,宅地とする。
(12) 火葬場については,その構内に建物の設備があるときは構内全部を宅地とし,建物の設備のないときは雑種地とする。8
(13) 高圧線の下の土地で他の目的に使用することができない区域は,雑種地とする。
(14) 鉄塔敷地又は変電所敷地は,雑種地とする。
(15) 坑口又はやぐら敷地は,雑種地とする。
(16) 製錬所の煙道敷地は,雑種地とする。
(17) 陶器かまどの設けられた土地については,永久的設備と認められる雨覆いがあるときは宅地とし,その設備がないときは雑種地とする。
(18) 木場(木ぼり)の区域内の土地は,建物がない限り,雑種地とする。