今回は、自動経理の仕組みを見ていきましょう。※本連載は、アアクス堂上税理士事務所の代表税理士で行政書士の堂上孝生氏の著書、『ベテラン税理士だけが知っている自動経理の成功パターン』(合同フォレスト)から内容を一部抜粋し、小規模企業の経理の悩みを解決する、クラウド会計ソフトによる「自動経理」について説明します。

これまでは、大量の領収書を保管する必要があったが…

自動経理とは当初、自動仕訳の意味合いでとらえられていました。ところがいまでは、自動電子帳簿保存の機能を加えて「自動経理」という場合があります。今後、おそらく先発メーカーは、こう言うでしょう。

 

「自動電子帳簿保存の機能なしでは、自動仕訳の機能だけで「自動経理」アプリとは言わない」と。

 

自動的な経理作業の流れは、次のようなプロセスを辿ります。

 

<経理仕訳>

 

①経理仕訳の前作業とは

 

経理の基本は「経理仕訳」です。つまり、領収書や請求書(自社が発行するもの、および取引先から送られてくるもの)を、複式簿記という経理手法によって「経理仕訳」します。

 

しかし、考えてみると、経理仕訳の作業の前に、領収書や請求書を収集して経理処理に備える前作業(経理証憑の収集整理作業)があります。小規模企業ではたいてい、ノートに日付順で領収書を貼り付けて、手作業の経理仕訳の前準備としています。

 

ところが、そのような整理は「小規模企業」には不向きです。なぜなら、「日付順」でノートに貼り付けても、後で社長のポケットから、社長立替の領収書が出てくるのが現場では日常茶飯事だからです。これでは、日付順が守れませんし、ノートに貼る作業時間も無駄になってしまいます。

 

このような事態を想定し、筆者は以前から、「領収書は月ごとに紙袋に入れて保管しなさい」と指導していました。

 

領収書の日付順・ノート貼り付けは、現預金の横領等の犯罪防止策として考えられたやり方です。でも、そのようなことで、横領等が防止できるはずもありません。子ども騙しのシステムです。その昔、大手の計算センターで、そこそこの「中小企業」が、経理帳簿を委託作成していた時代の名残です。

 

会計事務所がお客様から「記帳代行」をお引き受けするときは、その記帳記録(経理仕訳)と、証拠書類である「領収書」は、番号で突合(帳簿やデータなどとの照合チェック)できるようにするのは難儀です。コストがかかりすぎます。

 

だから、「紙袋」に入れて、仕訳済みのしるしとして、経理仕訳した各証拠書類に✓(チェック)マークを付けていました。

領収書等も「自動読取」で電子保存が可能に

②自動経理アプリの活用

 

ただ、それだと、膨大なボリュームの「領収書等」を紙ベースで保管する羽目になります。その苦労を解消するために開発されたのが、自動読取・自動仕訳をしてくれる「自動経理アプリ」です。

 

さらに、最近では、電子帳簿保存法により、「領収書等」もスキャンによる自動読取で、電子保存(PDFによる保存)ができるようになりました。

 

その際、「領収書等」に、総勘定元帳の経理仕訳と突合できるように「付番」することが義務付けられています。そこで「自動経理アプリ」を使えば、領収書等の自動読取したPDF1枚ごとに、自動で付番し、タイムスタンプを刻印するのです。これで会計帳簿の証拠書類として、会計監査対応がバッチリです。

 

会計事務所が記帳代行を引き受ける場合は、お客様から「1カ月ごとの袋」に領収書を入れて送ってもらうか、スキャナでメール送信してもらうかのどちらかです。紙に重ねて貼り付けられては、コピーもできませんし、領収書ごとのPDFイメージも作成できません。

 

このように、領収書をノートに貼り付ける作業は、会計事務所にとってはまったく「余計なお世話」なのです。

 

③自動仕訳の学習機能

 

いずれにしても、いまでは領収書・請求書は、自動読取され、自動仕訳されます。会計ソフトの画面に「この仕訳でよいですか?」と聞かれたら、素人経理を推奨する筆者としては、「すべて『はい』ボタンを押しなさい」と指導しています。

 

なぜなら、仕訳はすべて見直す建前だからです。つまり、「経理検査」としていわゆる「異常値監査」という監査手法を使って、「大きな間違いがない」状態を確保します。

 

そう言えるのも、いまでは「会計ソフト」は賢くて、自動的に「学習機能」をもっているためです。小規模企業の経理は「伝票の種類」がほぼワンパターンで、取引等の内容がほぼ決まっているからです。

 

たとえば、文具を買うときも「どのお店」と決まっている場合が多いです。それに「ペン200円」と領収書の品目が記載されていれば、「ペンは文具」とコンピュータが覚えます。

 

次からはその知識は蓄積され、品目「ペン」の領収書は、「借方事務用品費」と自動仕訳してくれるのです。それが消耗品になろうと、雑費になろうと、税務会計上は許される範囲ですので、筆者の事務所では「よし」としています。

 

これで経理仕訳が自動的に行われました。つまり、領収書の経理記録は、総勘定元帳に自動記録され、同時に経理の「試算表」(経理帳票の集計表)に自動的に情報伝達されます。

 

それは当然に、決算書情報、経営分析情報、キャッシュフロー計算情報それぞれにも機械的に伝達されます。この機能は昔からありましたが、最近はソフト内の処理スピードが速くなりました。

ベテラン税理士だけが知っている 自動経理の成功パターン

ベテラン税理士だけが知っている 自動経理の成功パターン

堂上 孝生

合同フォレスト

freee株式会社代表取締役社長 佐々木大輔氏推薦! 業務負担増、人材不足、人件費の経営圧…。小規模企業の経理の悩みは、クラウド会計ソフトで解決できます! 小規模企業の悩みの種である「経理」業務をいかに効率的に行い、…

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