今回は、退職金制度が「確定拠出年金」にすると、どのようなメリットがあるのかを見ていきます。※本連載は、株式会社アセット・アドバンテージの代表取締役で、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する山中伸枝氏による著書、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)より一部を抜粋し、自営業、公務員、会社員などの職業や、年代によって最適な「確定拠出年金の活用方法」をご紹介します。

会社が負担する掛金は「全額損金」に

<ケース6> 会社員

 

会社にとって退職金の積立金は引当金といって、会社の運転資金にはせずちゃんと保管しておかなければならないお金です。しかも経費扱いになりませんので、税制面でも負担です。

 

一方、確定拠出年金の掛金は従業員の老後資金のための積立であり、退職金と非常によく似た役割を担うお金です。しかし退職金の積立金とは異なり、会社が負担する掛金は全額損金となり会社の財務にとって大きなメリットをもたらします。このような背景から退職一時金制度を確定拠出年金に変更する会社も少なくありません。

 

これだけ聞くと何やら会社の都合ばかりのようですが、従業員にとってもメリットがあります。それは、確定拠出年金は会社から拠出を受けた瞬間から従業員の資産になる点です。例えば定年退職の前日に会社がつぶれたとしましょう。その際、退職金の支払いはあきらめなければならないでしょう。

 

一方で確定拠出年金であれば、拠出を受けた瞬間に会社から切り離され自分のお金になりますから、仮に会社が倒産しようがしまいが何の影響も受けないのです。

 

もうひとつのメリットは、退職所得控除が転職しても通算される点です。通常、退職所得控除の計算は退職をするたびにリセットされるのですが、確定拠出年金は個人型であっても企業型であってもすべての加入期間が通算され、より有利な受け取り方ができるのです。

運用方法によっては、受給額が減る可能性も

このように考えると、一概に退職金制度が確定拠出年金に変わったからといって、損になるとはいいきれません。

 

ただし、もともとの退職金の想定される金額から拠出額が著しく高い想定利回りで割り戻されているような場合、想定利回り以上の運用をしないと制度改正前の受給額を下回るということですので、そのあたりの情報は意識しておいた方が良いでしょう。

 

※受給額を下回る場合毎月の確定拠出年金の掛金は、従来の退職金の額を想定利回りで割り戻して算出されることもあるため、想定利回り以上の運用成果を上げないと、従来の退職金の額を下回ってしまうことがあります。

本書に記載されている情報は、2016年10月執筆時点のものです。本書に記載された商品やサービスの内容や価格、URL等は変更される場合があります。本書の出版にあたっては正確な記述につとめましたが、著者や出版社などのいずれも、本書の内容に対してなんらかの保証をするものではなく、内容やサンプルに基づくいかなる運用結果に関してもいっさいの責任を負いません。

ど素人が始めるiDeCo  (個人型確定拠出年金)の本

ど素人が始めるiDeCo (個人型確定拠出年金)の本

山中 伸枝

翔泳社

確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を補うものです。基本的に毎月掛け金を積み立て、それを貯金や投資商品に回します。 本書は、節税と資産形成に非常に有利なこの制度の仕組みをやさしく解説し…

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