今回は、確定拠出年金の「脱退一時金」の受け取りに必要な条件について見ていきます。※本連載は、株式会社アセット・アドバンテージの代表取締役で、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する山中伸枝氏による著書、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)より一部を抜粋し、自営業、公務員、会社員などの職業や、年代によって最適な「確定拠出年金の活用方法」をご紹介します。
極めてハードルが高い「脱退一時金」の受け取り
<ケース5> 会社員
確定拠出年金において脱退一時金の要件は非常に厳しくなっています。まず会社を退職する時点で残高が1万5000円以下であれば一時金で受け取れます。しかしそれ以上になると、まず脱退一時金はないと思いましょう。
特に2017年以降、更に脱退一時金を受け取るための要件が厳しくなります。
まず会社を辞めた人が脱退一時金を受け取るには、加入資格を失う必要があります。現時点で加入資格がないのは、国民年金保険料免除者、未納者、公務員、第3号被保険者(いわゆる専業主婦)、会社に確定拠出年金以外の企業年金(厚生年金基金、確定給付年金)がある人です。
しかし国民年金保険料免除者と未納者以外のケースはすべて2017年より加入資格を有します。つまり国民年金免除者と未納者以外の場合、脱退一時金を受ける可能性が全くないということです。
加入した以上、しっかり内容を理解して活用を
では、国民年金の保険料を未納にすれば良いのでしょうか? 残念ながらそれも難しいでしょう。
なぜなら、例え加入資格がなくても通算加入期間3年以下または資産残高50万円以下(2017年より25万円以下)のいずれかの条件に当てはまらなければ脱退一時金の要件とならないからです。
確定拠出年金の始まりが会社の制度という人は、ひょっとすると消極的な意識で始めてしまったかもしれませんが、始めた以上はしっかり内容を理解して活用したいものです。なぜならば老後のための資産形成はだれもが必要になるからです。
半ば強制的に始まったと思っている確定拠出年金も、あとから思い返せば若いときからコツコツとやっていて良かったと思う日が来るでしょう。
株式会社アセット・アドバンテージ
代表取締役
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーを目指す。
2002年にファイナンシャルプランナーの初級資格AFPを、2004年に同国際資格であるCFP資格を取得した後、どこの金融機関にも属さない、中立公正な独立系FPとしての活動を開始。金融機関や企業からの講演依頼の他、マネーコラムの執筆や書籍の執筆も多数。
個人相談も多く手がけ、年金、ライフプラン、資産運用を特に強みとしており、具体的なソリューション提供をモットーとする。
著書に、『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)、『ど素人が始めるiDeCoの本』(翔泳社)、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東京経済新報社)、『会社も従業員もトクをする! 中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)などがある。
●確定拠出年金の相談ができる全国のFPネットワーク
「FP相談ねっと」代表
https://fpsdn.net/
●公的保険のプロアドバイザーを育成する
「一般社団法人 公的保険アドバイザー協会」理事
https://siaa.or.jp/
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載自分年金をつくる ケース別「確定拠出年金」活用法