今回は、岩石であるヒスイが、「ジェダイト(ひすい輝石)」と評価される基準は何かを見ていきます。※本連載は、日本彩珠宝石研究所の所長で、独自にコレクション収集も行う飯田孝一氏による著書、『翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)』(亥辰舎)より一部を抜粋し、日本の国石である「翡翠」にまつわる様々な基礎知識をご紹介します。

純粋なジェダイトは色をもたない

ヒスイは岩石である事から石の内容は一様ではない。したがって、それをひすい輝石(ジェダイト)と評価するには、その為の基準というものが必要となる。

 

1個体のほとんど(90%以上)がジェダイトから成っている事が理想だが、『ジェダイト(ひすい輝石)NaAl[Si2O6]』は組成上で『エジリンAegirine(錐輝石)NaFe3+[Si2O6]』とほぼ連続しているので、一般式はNa(Al,Fe3+)[Si2O6]ということになる。さらにジェダイトには固溶体が存在するので、他の輝石の成分が入ってくる事もある。

 

ヒスイの色にもっとも大きく影響を与えるのは、『コスモクロア Kosmochlor(コスモクロア輝石)NaCr[Si2O6]』であるが、『オンファサイト Omphacite(オンファス輝石)NaCa(Mg,Fe3+)Al[Si2O6]2』も最大限にその色に影響する。

 

純粋なジェダイト(理想化学組成に近いもの)は色をもたないので無色(白色)だが、それから構成されるヒスイにはそれらの輝石の成分が混入する。コスモクロアのCrはヒスイの塊に鮮やかなグリーンの色を与え、オンファサイトのFe3+の混入はヒスイにくすんだグリーンの色を与える。

 

 

したがってその固溶の成分がAl>Crの場合にはその結晶をジェダイトと呼ぶが、Al<Crとなった場合にはコスモクロアと呼ぶ事になる。

 

鉄分の固溶も考えなくてはならない。鉄分が20%以下ならジェダイト、20%以上になり80%以下の範囲であるならばオンファサイトと解釈する。

 

通常、不透明な石でない限りはジェダイトと評価される

しかしその境界は化学分析を行わなくては正確に区分できないので、通常範囲の鑑別ではかなり濃緑色の不透明な石でない限りはジェダイトとしている。

 

さらにCaもひすい輝石と固溶体を形成するから、その場合にはCaが20%以下ならジェダイト、20%以上になり80%以下の範囲であるならば『ダイオプサイド Diopside(透輝石)CaMg[Si2O6]』と考える。

 

つまり、ヒスイは100%ジェダイトの集合だけから出来ているわけではないから、ジェダイト粒子の体積が100%に近いものほど良質なヒスイという事になる。しかし最近の研究で、ほとんどの品質のジェダイトにオンファサイトが大小の分量で混在していることが解ってきた。これが我々鑑別家が古くから行ってきた分光分析での「ジェード・ライン(437.5nm)」の検出である。

翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)

翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)

飯田 孝一

亥辰舎

2016年に日本の国石として決定された「翡翠」。本書では、ヒスイの伝説や歴史、産出される形態、類似の石の一覧や、簡単な鑑別方法から専門法までご紹介します。翡翠について興味のある方や、宝石人必携の書です!

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