ヒスイの正式名称「ジェディタイト」が定着しなかった理由

今回は、ヒスイの正式名称「ジェディタイト」が定着しなかった理由を見ていきます。※本連載は、日本彩珠宝石研究所の所長で、独自にコレクション収集も行う飯田孝一氏による著書、『翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)』(亥辰舎)より一部を抜粋し、日本の国石である「翡翠」にまつわる様々な基礎知識をご紹介します。

「発音のしにくさ」が原因!?

ヒスイは集合構造をもっている宝石で、正式には『ジェディタイト Jadeitite(ひすい輝石岩)』という名前があるのだが、ではなぜそれがジェダイトという名前で呼ばれているのかというと、ものの名前のすべてがそうである様に、慣れ親しんだ名前は立場が強いのである。加えてジェディタイトという名前は発音上で噛み易く、一般には定着しなかったのも頷ける。

 

「ジェディタイト」は、最初は“ジェードの中のジェード”的なイメージをもって付けられたものであるが、それを鉱物学の視点で見ると、『ジェダイト Jadeite(ひすい輝石)』の集合体ということになる。

ジェダイトをはじめとした「輝石」の仲間

ジェダイトはソーダを含むアルカリ輝石で、パイロクシン Pyroxene(輝石)グループに属する鉱物群の中の1つである。

 

[図表1]ソーダを含むアルカリ輝石の分類

(茅原一也著ヒスイの科学(Ko)ー(Ac)-(Jd)系の分類をアレンジして使用)
(茅原一也著ヒスイの科学(Ko)ー(Ac)-(Jd)系の分類をアレンジして使用)

 

宝石として知られる『スポジュミン Spodumene(リチア輝石)』『ダイオプサイド Diopside(透輝石)』『エンスタタイト Enstatite(頑火輝石)』『ヘデンバージャイト Hedenbergite(灰鉄輝石)』も輝石の仲間である。

 

ひすい輝石の自形の結晶が肉眼で観察できる珍しい例。白色や緑色の柱状結晶が見える。結晶が成長しているベースの部分は肉眼では見えないほど微小なひすい輝石の集合から成っている。新潟県産
ひすい輝石の自形の結晶が肉眼で観察できる珍しい例。白色や緑色の柱状結晶が見える。結晶が成長しているベースの部分は肉眼では見えないほど微小なひすい輝石の集合から成っている。新潟県産

 

[図表2]輝石の鉱物名、化学組成、結晶系の一覧

日本結晶学会の決議により、現在用いられているOrthorhombicの日本語訳である「斜方晶系」が適切な訳語でないとの理由から、より適切であると思われる「直方晶系」という語に変更された。今後の書籍文献類の中では斜方晶系⇒直方晶系となる。
日本結晶学会の決議により、現在用いられているOrthorhombicの日本語訳である「斜方晶系」が適切な訳語でないとの理由から、より適切であると思われる「直方晶系」という語に変更された。今後の書籍文献類の中では斜方晶系⇒直方晶系となる。

日本彩珠宝石研究所 所長

日本彩珠宝石研究所所長。1950年生まれ。1971年今吉隆治に参画「日本彩珠研究所」の設立に寄与。日本産宝石鉱物や飾り石の世界への普及を行う。この間、宝石の放射線着色や加熱による色の改良、オパールの合成、真珠の養殖などの研究を行う。
1985年宝石製造業、鑑別機関に勤務後「日本彩珠宝石研究所」を設立。崎川範行、田賀井秀夫が参画。新しいタイプの宝石の鑑別機関として始動。2001年日本の宝石文化を後世に伝える宝石宝飾資料館を作ることを最終目的とし、「宝飾文化を造る会」を設立。現在同会会長。2006年天然石検定協議会の会長に就任。
終始“宝石は品質をみて取り扱うことを重視すべき"を一貫のテーマとした教育を行い、“収集と分類は宝飾の文化を考える最大の資料なり"として収集した飯田コレクションを、現在同研究所の小資料館に収蔵。

著者紹介

連載日本の国石「翡翠」の基礎知識

翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)

翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)

飯田 孝一

亥辰舎

2016年に日本の国石として決定された「翡翠」。本書では、ヒスイの伝説や歴史、産出される形態、類似の石の一覧や、簡単な鑑別方法から専門法までご紹介します。翡翠について興味のある方や、宝石人必携の書です!

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