今回は、代表的な「ヒスイの変種」「ヒスイとは呼べない石」について見ていきます。※本連載は、日本彩珠宝石研究所の所長で、独自にコレクション収集も行う飯田孝一氏による著書、『翡翠 (飯田孝一 宝石のほんシリーズvol.2)』(亥辰舎)より一部を抜粋し、日本の国石である「翡翠」にまつわる様々な基礎知識をご紹介します。

宝石としての魅力がない「ヒスイの変種」

ジェダイトとコスモクロアが混在しているもので、一部にオンファサイトも存在する。岩石という視点で見てヒスイとして評価しても大きな問題はないが、宝石という視点でみると純粋なジェダイトの魅力はない。

 

このタイプは、中国では“緑の石”という意味で『鉄緑林(ティロンジン)』と呼ばれているが、その外観から、日本では一時期『スポンジ・ヒスイ』と呼ばれた事がある。

 

ヒスイではないのに、ヒスイとして取引されることも

ほとんどがジェダイトとは異なる鉱物種から成るもので、ヒスイと呼んではならないものだが、マーケットの一部ではジェダイトとして取引されている事がある。内容としては、ジェダイトがわずかに存在するものからほとんど含んでいないものがある。

 

●モー・シ・シ Maw-sit-sit

 

ミャンマーのジェード・マーケットで、フランスのE.グベリン博士により発見されたもので、1963年に『ジェード・アルバイト Jade albite』と命名された。

 

ミャンマー北部のトーモーで、ジェダイトの周縁部に形成されており、産地では地名からモー・シ・シと呼んでいた。しかし構成鉱物のほとんどがジェダイトと異なる種類から成ることから、ヒスイの関係者は「スード・ジェダイト Pseudo-jadeite(偽物のジェダイト)」と呼んでいる。

 

主にクロムを含むアルバイト(曹長石)から成り、「ホワイト・アルバイト」、「クローライト(クリノクロア)」、「コスモクロア」、「エッケルマナイト Eckermannite(エカーマン石)NaNa2Mg4Al[OH|Si4O11]2」から構成されて、ジェダイトはほんの数パーセントしか含まれていない為ヒスイと呼んではならないものである。

 

ペイントの様な黄色がかったグリーンの生地に、鮮緑色・暗灰色・黒色・白色と多彩な集合を見せる。

 

話が複雑になるが、この石はかつて日本とドイツで誤ってクロロメラナイトと混同して呼ばれた経緯をもつが、未だにその名称で販売されている事がある。

 

●『ブラック・ジェード』と呼ばれているもの

 

ブラック・ジェードと呼ばれているものの中に、オンファサイトから成るブラック・ジェードや、炭素鉱物を含んで黒色に見えるヒスイとは違うものがある。

 

外観からは完全に黒く見えるが、生地中にグリーンの斑点が散在し、黒色部を強い光の下で観察すると、濃い緑色と黒色の混在したものである事がわかる。

 

ヒスイと呼んではならないもので、「コスモクロア」と「エッケルマナイト」と「エデナイト Edenite(エデン閃石)NaCa2Mg5[(OH)2|AlSi7O22]」が様々な比率で混在する。この種の石の中には、火成岩から変成して出来たものもある。

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