「バリューチェーン」を2つの戦略から考えると…
ビジネスモデルは、大きく「バリューチェーン」と「収益モデル」の2つによって構成されます。
まず、「バリューチェーン(ValueChain)」とは、原材料の調達から製品・サービスを顧客に届けるまでの企業活動のプロセスを、技術的・経済的な観点から区分し、複数の活動に分割したうえで、それらを価値のつながりとしてとらえる考え方です。マイケル・ポーターによって唱えられた概念で、一般には「価値連鎖」という訳語があてられています。
ここではバリューチェーンを、バリューチェーンのあり方を決定する「オペレーション戦略」とマーケティング活動にかかわる「マーケティング戦略」に分けて考えてみましょう。右ページに示したように、それぞれの戦略に対応した形で「オペレーションサイド(バックオフィス)」と「マーケティングサイド(フロントオフィス)」が重要な役割を果たします。
オペレーションサイドでは仕入・提携先から事業主体までの範囲を対象として、もっぱら運用プロセスやサプライチェーンに対する注意が必要になります。一方、マーケティングサイドでは事業主体からターゲット顧客までの範囲を射程に入れ、顧客の利用プロセスやタッチポイント(顧客接点)を意識した視点が求められることになります。
[図表1]バリューチェーンのイメージ図
M. E. ポーターの「バリューチェーン」
収益モデルのマージン型・回転型・顧客ベース型とは?
ビジネスモデルの一方の柱をバリューチェーンとすれば、もう一方の柱は「収益モデル」になります。収益モデルは「いかに儲けるか」の仕組みであり、「マネタイズモデル」とも呼ばれます。
収益モデルは大きく、①マージン型、②回転型、③顧客ベース型という3つのタイプに分けられます。
まず、①マージン型はロイヤリティ、仲介手数料等の提供サービスに対する対価をマージンとして受け取る収益モデルです。顧客に対価の支払いを納得してもらうためには、提供するサービスの価値を向上させることが必要となります。そのため、マージン型では、ブランド力の向上など価格プレミアムを高める努力が強く求められることになります。
また、②回転型は商品、サービスの回転率を上げることにより、収益をあげるモデルです。一般に低コストの製品が取り扱われる事業において、この収益モデルが広く利用されています。回転率の向上は、資金の回転にとってもメリットが多く、また不良在庫回避の点でも大きな効果があるといわれています。
そして、③顧客ベース型はフリーミアム(後述)に代表される課金モデルであり、まず無償でサービスを提供することにより顧客ベースを拡大させたうえで、さらなるサービスを有償で提供することにより、収益をあげるモデルです。
顧客ベース型の収益モデルで得られる具体的な金銭的対価としては、有料ユーザーからの利用料、定額の固定フィー、広告料などがあげられます。
[図表2]収益モデル