前回は、中小法人の「社長の給料」はいくらに設定すべきかを説明しました。今回は、「法人決算」と「個人事業の決算」の違いを具体的に見ていきましょう。

法人決算で重要な損金等の算入・不算入の申告調整

「青色申告65万円控除も、自分でなんとかクリアできた」という個人事業主の方も、法人の確定申告となると、途端にハードルが高くなります。

 

申告書類の数は、明細書や付表なども合わせると、なんと100種類以上! 一般的に提出が必要となるのは10種類程度ですが、それぞれ小難しい名称や専門用語が羅列されており、「見ただけでギブアップ!」という声も・・・。

 

では、法人決算と個人事業の決算のもっとも大きな違いは何なのか。

 

個人事業の場合は、個人の場合と同じく所得税法が適用されるため、単純に会計上の「利益(売上)」から「費用」を差し引き、利益を算出。そこに税率をかければ納税額が算出されます。

 

しかし、法人の場合は、企業会計上の利益を出発点に、法人税法上の「益金」と「損金」の算入、不算入の申告調整をし、納税額を出す必要があります。

 

つまり、

●個人「収益(売上)-費用=利益」

●法人「益金-損金=所得」

となるわけです。

 

そして、法人決算の場合、

●会計上は費用にならないが、税法では損金になる=損金算入

●会計上は収益でも、税法では税金の対象(益金)にならない=益金不算入

●会計上は費用でも、税法では損金にならない=損金不算入

●会計で収益でなくても、税法では収益(益金)となる=益金算入

 

の、4つの税法上の加算・減算をしなければなりません。そこが、個人事業の確定申告には手慣れた人でも、わかりにくいポイントとなります。事例を挙げると、資本金1億円超の企業の場合、交際費全額が損金不算入となります。

 

ただし、飲食費が1回1人当たり5000円以下ならば、交際費から除かれます。会社員時代、取引先との飲食費について「1人5000円までという規定があった」という方もいらっしゃるでしょう。これは交際費から除くためというわけです。

 

ただし、中小企業の場合は、交際費の一定額が損金算入可能となります(交際費800万円まで)。

自力で法人決算を行うには、相応の勉強と時間が必要

こうした細かいポイントを含め、法人決算はなかなか手ごわいもの。「時間があって勉強したい」という方は、税務署でも相談に乗ってくれますので、トライしてみてもいいでしょう。

 

ただし、個人の確定申告と違って、国税局の支援サイトなどもないため、自力でトライするには、相応の勉強と時間が必要となります。また、知識不足で間違った申告をすると、後に修正申告や追徴金支払いのリスクもあります。

 

「法人化して、顧問税理士を頼むかどうか?」の見極めや基準については、巻末付録で解説しています(本書籍をご覧ください)。検討材料として参考にしてみてください。

本連載は、2017年2月24日刊行の書籍『どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

櫻井 成行

幻冬舎メディアコンサルティング

個人事業主にとって、日々のお金の管理や確定申告は、頭を悩ませることのひとつです。忙しい仕事の合間を縫って、毎年〆切ギリギリに何とか税理士に資料を提出する、という人も少なくないでしょう。数字や計算が苦手な人は特に…

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