前回は、個人事業の法人化でトクをする、損益分岐点の計算方法を説明しました。今回は、法人化の検討にあたっては、売上1000万円がひとつの基準になる理由を見ていきましょう。

消費税課税対象事業者になりそうなら、法人化の検討を

今回は、個人事業主と同じ収入をキープするとして、法人を設立したらどうなるかを考えてみます。

 

収入から費用を差し引き、残りが利益となるのは個人事業主と同じですが、法人の場合は、その額を基準に社長の給料、役員報酬を設定することになります。そこで決めた報酬から給与所得控除を差し引いたのが個人の所得、残りが法人所得となります。

 

個人事業の時と同様、所得税、住民税、さらに法人税をざくっと計算して書き入れてみます。法人税については、本来は法人税法上の調整が必要となりますが、ここでは目安を見るだけなので考慮しないことにします。また、新法人設立2年間は消費税免税として考え、合計税額を計算し、比較してみましょう。

 

いかがでしょうか。もし、法人にしたほうが、税金の総額が安くなるようでしたら、そろそろ切り替えのタイミングを検討してもよいという判断になります。

 

また、「年度内の売上が1000万円を超え、消費税課税対象事業者になりそう」といったタイミングも、法人化を検討する時期といえるかもしれません。

 

個人事業主と法人では、まったく別の扱いになるため、年度の途中で法人化しても、個人事業と法人での売上は通算されません。法人を設立した時点でリセットされるため、合計で売上が1000万円以上になったとしても、免税となります。消費税負担だけを考えても、法人化するメリットがあるわけです。

法人税の課税対象となっている中小法人は少ない

そもそも、日本では国内企業全体の約7割が法人税を払っておらず、中小法人の多くは、利益についてはトントンになるよう役員報酬が設定されているケースが大半です。つまり、法人税の課税対象となっている企業はごく少数派です。

 

一方、個人事業主の場合、売上、利益が上がってくると、事業税および消費税の支払いもじわじわと負担になってきます。

 

税金面で、法人化したほうがおトクとなる損益分岐点を見極める意味でも、まずは大まかで構わないので、それぞれの税金負担を計算してみることをお勧めします。

本連載は、2017年2月24日刊行の書籍『どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

櫻井 成行

幻冬舎メディアコンサルティング

個人事業主にとって、日々のお金の管理や確定申告は、頭を悩ませることのひとつです。忙しい仕事の合間を縫って、毎年〆切ギリギリに何とか税理士に資料を提出する、という人も少なくないでしょう。数字や計算が苦手な人は特に…

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