前回は、個人事業を「法人化」する際のデメリットを説明しました。今回は、個人事業の法人化でトクになるのか、その「損益分岐点」の計算方法を見ていきます。

「所得」の額で法人化のタイミングを見極める

では、税金面からは、法人化のタイミングをどう見極めるべきなのか。

 

まずは、法人税・所得税についてザックリとおさらいしておきましょう。一口に法人税と呼ばれますが、実は法人税、法人事業税、法人住民税の3つに分けられます。

 

それぞれの税率を見ていくと、法人税については、資本金1億円以下の中小法人の年800万円以下の所得に対しては15%、800万円超で25.5%(平成31年3月31日までの特例延長予定)。

 

その他の法人事業税、法人住民税についても、税率は引き下げ傾向にあり、中小法人の場合、平均して3つの法人税を合わせた実質的な負担率(実効税率)は30%前後で収まる目安になります(都道府県によって異なる)。

 

一方、個人事業主については、累進課税制度に基づいた所得税率が課せられることとなります。

 

よって、所得が少ないうちは、個人のままのほうが税率では低くなりますが、課税所得900万円を超えたところで税率は33%、1800万を境に40%の税率が課せられ、それに加えて住民税、個人事業税なども発生してきます。

 

さらに社会保険や消費税などの負担も勘案して考えると、法人にしたほうが税金が安くなる一定の境界が存在するというわけです。

課税所得をもとに、税金がいくらかかるのかを計算

その目安を算出するための計算式を図解したのが以下の図表です。

 

[図表]個人事業から法人事業に移行した場合の税金の違い

 

さっそく、電卓を片手に計算してみましょう。現状が個人事業主とすると、その取り分は「収入」から「経費」を引いた残りの「利益」となります。

 

その利益から青色申告特別控除の65万円(あるいは10万円)、その他の所得控除を差し引いた課税所得をもとに、税金がいくらかかるのか。大まかで構わないので、所得税、住民税を計算し、さらに事業税、消費税課税事業者の場合は、消費税も書き入れてみましょう。

本連載は、2017年2月24日刊行の書籍『どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理

櫻井 成行

幻冬舎メディアコンサルティング

個人事業主にとって、日々のお金の管理や確定申告は、頭を悩ませることのひとつです。忙しい仕事の合間を縫って、毎年〆切ギリギリに何とか税理士に資料を提出する、という人も少なくないでしょう。数字や計算が苦手な人は特に…

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