人目を気にする日本人が生んだ「裏側矯正」
前回の続きです。
とはいえ、日本ではなぜか「矯正歯科治療の装置を付けるのは恥ずかしいこと」というイメージが広く浸透してしまっているような気がしています。そのせいもあるのでしょうか、「ワイヤーを付けるのは嫌だ」とか「ワイヤーの見た目が気になる」という理由で、矯正歯科治療をためらっている人が多くいると感じています。
あえて装置をカラフルに飾っておしゃれを楽しむ人がいる一方で、矯正歯科治療をしていることをなるべく見られないようにしたいという患者さんは確かに多いのですが、裏側矯正や透明なブラケットと白いワイヤーを使った矯正歯科治療、透明のマウスピースをつかったマウスピース矯正など、そうした患者さんのニーズに応えるための矯正器具や方法もいろいろとあり、目立たず、周囲に気付かれずに矯正することも可能になっています。
ちなみに「リンガル矯正」「舌側矯正」とも呼ばれる裏側矯正は、「装置が見えるのが嫌だから、矯正したくない」という日本人の悩みに応え、日本人が最初に開発した矯正方法です。
裏側矯正はその名のとおり、矯正装置を歯の裏側に付けて行います。矯正していることが外から見えず、他人に気付かれにくいというのが大きなメリットで、欧米ではあまりポピュラーではありませんが、日本ではとても人気のある矯正となっています。
人前に出ることの多い仕事に就いている人などは、矯正装置を付けて生活するのが難しいという場合があるかもしれません。また、いくら欧米では当たり前で、ステイタスすら感じさせるものであると言われても、「日本ではまだ、人目が気になるから」ということもあるでしょう。
しかし、だからといって「矯正歯科治療を諦める」と結論づけてしまうのは、とても惜しいことだと思います。そのような悩みで矯正歯科治療をためらっているのであれば、〝目立たない矯正〟について、一度、矯正歯科医に相談してみることをおすすめします。
成人式や結婚式に向けて歯並びを治す女性が増加
大人になってから矯正歯科治療をしようと考える人は、今は圧倒的に女性のほうが多いのですが、特にその中でも増えてきているのが、「人生の中での大事なタイミングに合わせて、歯並びを治したい」というニーズでしょう。
私のところにも、18~19歳になった頃に「成人式までに歯並びを治したい」と矯正を始める女性や、結婚が決まってから「結婚式までに、きれいな歯並びになっていたい」という女性がよく訪れます。矯正のメニューとして提案しているわけではないのですが、いつの間にか「〝ブライダル矯正〟をしたい」と言われることも多くなりました。
振り袖やウエディングドレスの晴れ姿は、一生に一度の思い出となります。プロのカメラマンに頼んで写真を撮ってもらうという人も多いことと思いますが、「せっかくの機会だから、もっときれいになって、素敵な笑顔で写りたい」と願うのは自然な欲求なのでしょう。
また、今の若い人たちはプリクラをしたり、スマートフォンで自撮りしたりしていると思います。そのような写真を日常的に撮る文化が定着し、自分の顔を客観的に見つめる時間が増え、歯の白さや歯並びに対しても、以前より若い世代を中心に関心が高まってきたのではないでしょうか。