歯並びに比べ、噛み合わせの悪さを気にする人は少ない
日本人の約8割の人は噛み合わせが悪いというデータがありますが、自分の噛み合わせがいいのか悪いのか、実はよくわかっていないという人が多いのではないでしょうか。
本当は噛み合わせが悪いのに、「歯並びで少し気になるところはあるけれど、噛み合わせが悪いというほどではないだろう」とか、「ふつうに食事できるから問題無い」と考えている人も多いのではないかと思います。
私のところに矯正の相談に訪れるのは、9割方、見た目を気にしてやってくる人たちなのですが、実際に噛み合わせをチェックすると「いちばん奥の歯でしかものを噛めない」「全体の半分ぐらいの歯だけでしか食べ物を噛めていない」などという人も意外にいます。しかし不思議なことに、皆さん「噛み合わせが悪くて、ものをまともに噛めていない」ことに対しての自覚はありません。
噛み合わせは、自分でも簡単にチェックすることができますので、一度、鏡を見ながら確かめてみることをおすすめします。チェックするポイントは、6点あります。
ポイントは「全体のバランス」「深さ」など
1.〈前後のバランス〉上の歯が下の歯より2〜3ミリ外側に並んでいるか
前歯だけでなく奥歯の噛み合わせも、上の歯が下の歯より2〜3ミリ、外側に並んでいなければなりません。
噛み合わせが正しくない場合、食べ物を効率よくすりつぶすことができなくなる、発音が悪くなる、頬や舌を噛みやすくなり、口内炎ができやすいなどの支障が出る可能性があります。
2.〈左右のバランス〉上下の前歯の真ん中が一致しているか
上下の顎の骨や歯の噛み合わせが左右どちらかにずれていると、食べ物をしっかり噛めなくなるだけでなく、顔を正面から見た時に、顔の下半分が曲がり、ゆがんで見えることがあります。
3.〈上下の前歯の噛み合わせの深さ〉上の前歯が下の前歯に2〜3ミリの高さで重なっているか
下の前歯が3分の1隠れる程度の深さで重なっているのが理想的です。
上下の前歯が噛み合っていなくてスペースが空いていたり、逆に上の前歯と下の前歯の重なりが4ミリ以上ある噛み合せが深い場合は、正しい噛み合わせとはいえません。
噛み合わせが浅いと、食べ物を噛み切ることが難しくなります。また、噛み合わせが深すぎると下の前歯で上の歯茎を噛んでしまうことが多くなり、傷ができたり、炎症を起こしたりします。噛み合わせが深いと顎関節にも負担がかかってしまうため、顎の関節が痛い、口を開けづらくなる、顎を動かすと関節が鳴って音が出るなどといった顎関節症の症状が出ることもあります。
4.〈歯並びの状態〉歯が横の歯と重ならずに並んでいるか、永久歯の歯と歯の間にすき間が空いていないか
歯が並ぶ顎の骨の大きさと歯の大きさのバランスが取れていないと、永久歯に生え換わる時にスペースが足りずに歯が重なってしまったり、歯並びがガタガタになったりすることがあります。ちなみに、歯の重なりの代表的なものが八重歯です。
乳歯の適切な歯並びは永久歯の歯並びとは違い、歯と歯の間に充分なすき間が空いている状態が正しい歯並びとなります。
これは、永久歯のほうが乳歯よりも大きいためです。乳歯がすき間なく生え揃っている場合、永久歯になった時、歯の重なりやガタつきが出てくることが多いでしょう。
5.〈鼻呼吸ができているか〉力を入れなくても自然に唇を閉じることができるか、口呼吸が習慣になっていないか
前に出ている上の前歯があったり、口元全体が前に出ていたりすることが原因で、特に自覚の無いまま口呼吸になっている場合があります。自分の横顔を見た時口元が出ていないかどうか、併せてチェックしてみるといいでしょう。
6.〈口角の位置〉口を閉じた時、左右の口角の高さが同じになっているか
鏡で自分の正面の顔を見て、左右それぞれ、目から唇の端までの距離を確認してみましょう。口角の高さがずれている場合、左右の噛み合わせがずれている可能性があります。
また、笑顔をつくって、その時左右の口角の高さに違いがないかどうかもチェックしてください。
噛み合わせが悪くなる原因には、自然に生え換わるのではなく虫歯によって無くなった乳歯がある、虫歯や歯周病などで抜けた永久歯がある、埋まったままで生えてこない永久歯があることなどが考えられます。そのほかには、遺伝、生まれつき永久歯の数が上下で違ったり、舌小帯という舌の裏にある筋が短い場合なども関係します。