具体的にどんな地盤改良が行われているのかも調査
ここからは、「告知されない瑕疵」を見抜くために何をすればよいかについて、瑕疵別にお話ししたいと思う。家を買う前に、借りる前に、ぜひ参考にしてほしい。
地震の頻発する日本においては、身の安全を鑑(かんが)みると、地盤の性状を調べるのが無難であろう。その場所がどのような歴史をもつ土地であるのかは、昔の地図を大手書店などで入手すれば確認できる。
また、国土地理院が提供する航空写真データも役に立つ。戦前からの様子を確認出来る「地図・空中写真閲覧サービス」など貴重な情報データが数多く揃っているのだ。
要注意なのは、かつて田んぼや丘陵地(盛土側)、池、沼、海だった土地である。現実には、そのような歴史をもつ土地が少なくないので、重要なのは、その地盤に対する相応の改良が十分に施されているかどうかである。
深さ2m程度までの浅い軟弱地盤をセメントで固める「表層改良工法」、セメントミルクを柱状に注入して地中に杭を作る「柱状改良工法」、もしくは鋼管杭を支持地盤まで打ち込む「鋼管杭工法」のうち、どの工法が行われたのかなど、具体的にどのような地盤改良が行われているのかを売主や仲介業者には必ず確認しておこう。
杭を使用する工法に関しては、その径や長さ、本数、それらがどれ位の深さまで打ち込まれているのかも確認し、その強度に問題がないか専門の第三者に判断を仰いでおくとさらに安心である。昨今、セカンドオピニオン的な立場から地盤調査・保証を行う企業も増えているので、これらを利用するのも手だろう。
雨の日にも現地を訪問する用心深さも必要
頻発する台風の襲来、爆弾低気圧の発生など、近年日本は各地で集中豪雨による深刻な浸水被害が多発している。局地的な被害がいつどこで起こるか予測がつかないだけに、完全に予防することはできないだろうが、その被害を最小限に抑えるためには、自治体が提供する浸水実績図やハザードマップの確認は欠かせない。物件が地形図の谷線に位置してないかのチェックも必要だろう。
また、晴れの日だけでなく、雨の日にも現地を訪問し、排水状況や土の濡れ具合をチェックしておく位の、用心深さも必要であろう。
むろん、駐車場に土嚢が積んであったり、道路よりも基礎が高くなっていたら要注意。それらは過去に浸水があった痕跡である可能性が高いからである。
土地を購入する際には、地盤調査報告書や土壌汚染調査報告書の提出を要求するのが得策だ。古い家の跡地には浄化槽が残っていることが多く、工場跡地などの場合は、何が埋まっているかわからない。鉛、油分、ふっ素、ほう素、六価クロム、シアン、砒素、ダイオキシン類、PCBなどによる土壌汚染の心配もある。それらが確実に排除されているか、確認しておくに越したことはないだろう。
また、契約に際し、埋設物特約(埋設物が出てきたら、売主費用で撤去する)を付けてもらうか、契約前に掘削調査(50坪で10万~20万円程度)をさせてもらい、調査費用を売買金額から控除してもらうのも一考だろう。土壌汚染対策法では、土壌汚染の調査義務は「現在の土地所有者」にあるとされ、品確法でも、土壌の欠陥についてまではカバーされるので、これらは必ず「契約前に行う」ことが鉄則だ。事前対策に勝る対策はないのである。
建物の瑕疵を見抜くには、設計図書(配置図、平面図、立面図、断面図、仕上表、仕様書等)を入手し、第三者の建築士にチェックしてもらうのがよいだろう。中古物件の購入においては、設計図書が入手しづらいこともあるだろうが、その際は、第三者の専門家による現場チェックをしてもらうことをおすすめする。
もちろん、雨漏り、床の傾き、壁のヒビなどは素人でも確認できる。そのような物件は避けるのが無難であることは間違いない。
意外な盲点となるのがシロアリ対策である。購入前には必ず防腐・防蟻(ぼうぎ)措置の保証書の提出を求めることも忘れてはいけない。
疑わしい建材や塗料などが使用されていないか?
シックハウス症候群は、建材から揮発する化学物質などによって引き起こされる健康被害の総称であるが、発症してしまうと、その原因物質を取り除かない限り、根本的な解決にはならない。内部仕上表や工事見積書などで、疑わしい建材や塗料などが使用されていないか確認することも必要であろう。
なお、2003年にはシックハウス対策規制法が施行され、住宅を新築する場合、シックハウスの原因となる化学物質、具体的には、ホルムアルデヒドの使用制限とクロルピリホスの全面使用禁止が定められていることは覚えておいた方がよい。
日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)では、ホルムアルデヒドの発散量が低い製品に、最高ランクの等級「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」から段階的に等級表示を定めている。
アスベストに関しては、1995年頃から使用規制が強化されているものの、アスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボードなどが使用されていたり、壁の内側にアスベストが吹き付けられているケースがある。
ただ、吹き付けアスベストが露出した状態で使用され、その繊維が空気中に浮遊した状態になければ大きな問題はないので、あまり神経質にならなくてもよいだろう。