学生の語学力とバイタリティに注目
長期インターンに参加する学生の中には、自分を高めようとさまざまなスキルを習得している人も少なくありません。そのひとつが、海外留学を通じて習得した語学力です。私の会社に来る学生の多くは留学経験があり、中には外国語学部に所属している人もいます。
これまで、私の周りの中小企業の多くは国内での仕事がメインだったので、あえてコストをかけてまで語学堪能な社員を雇う必要はないという考えを持っていました。ただ、時代は変わり、特に製造業にとっては国内需要だけに頼れない状況です。
私の会社は学生主導で外資系投資会社の支援金を2回にわたって獲得したのですが、実はそれだけでなく、クラウドファンディングにより海外事業展開のための資金調達を実施しました。クラウドファンディングとは、事業者やクリエイターが活動のための資金を調達する方法です。
私の会社がチャレンジしたクラウドファンディングは、「宙とぶペンギン」というサイトです。このサイトは、地域密着型のプロジェクトや夢を追う若者が立ち上げたプロジェクトが多いのが特徴です。私の会社はそこで資金を募りました。時期はちょうど、ぎふメディアコスモスのプロジェクトが終了した直後です。
プロジェクトをまとめ上げ、一息つこうとしているT君に私は「これからが本格的に動いてもらうときだ」と伝え、海外事業について展望を話しました。
T君は目を輝かせていました。活躍の場がどんどん広がっていくことが楽しく、うれしかったのでしょう。すぐプロジェクト立ち上げにとりかかり、資金調達のためにこのクラウドファンディングに目をつけたのです。
目標は、海外に私の会社のテントを立てること。
地方の中小企業にインターンに来ている学生が、アジア中を飛び回り、本気でプロジェクトを成功させようとしている。その熱意が投資家たちの心を動かしました。
[図表]クラウドファンディングホームページ
投資家やサイトの訪問者から募る金額の目標は、当初150万円でしたが、期間終了までに多くの申し込みがあり、あっという間に大幅に目標を上回る300万円を達成しました。
私の会社はこのようにして海外進出をスタートできるチャンスを手にすることができたのです。
現地訪問を通じて開拓先を変更した例も
この海外事業にメインで関わっているのは、先ほどのT君と愛知県立大学外国語学部3年生のM君です。M君はインターンへ来る前に1年間カナダへ留学し、英語が堪能。人当たりがよいので現地のスタッフや学生との関係もすぐにつくることができます。
1度目の現地調査では現地のゼネコンを訪問して、テントがどういった場面で使われるかというのをヒアリングしたり、スーパーやホームセンターに行って、テントがいくらで販売されているかをリサーチしたりと市場調査から始めました。
2度目の出張では、前回の情報も踏まえて大手ゼネコンを中心に回って、サンプルを見せながら営業活動をスタート。ところが、いざそこまで深く知ってみると、ベトナムの建設業界は壊滅的な状況だったのです。世間一般ではベトナムは景気がよい、進出するなら候補のひとつとして挙がっていますが、実際には世界中の大手ゼネコンが進出していて、血眼になって仕事を取り合っているような状態でした。
新しく進出するマーケットとしてはあまりよくないと判断し、同時進行で市場調査を進めていたインドへと開拓先をシフトしたのです。
インドでは、営業スタイルを180度変えました。
ベトナムではこちらからゼネコンに対して低姿勢で、「仕事ありませんか」と訪問していましたが、インドでは政治家や教育者など、階層の高い人と人脈をつくり、トップダウン方式でアプローチしたのです。
作戦が功を奏して、一人、有識者と記念撮影をして、「この人と以前会って話をしてきた」と話すと、面白いほどトントン拍子に事が進んでいきました。