前回に引き続き、現金1億円と1億円で買った土地、どちらの相続税が安いのかを説明します。※本連載は、エクスプレス・タックス株式会社の代表取締役で、税理士の廣田龍介氏による著書、『事例でわかる高齢化時代の相続税対策』(毎日新聞出版)より一部を抜粋し、相続の基本的な知識を、事例を交えながら紹介します。

様々な相続税評価減の規定がある土地の保有

前回の続きである。

 

考慮すべきはその土地に固有の要素だけではない。周辺地域の将来の道路計画や、建て替え時のセットバックの有無なども考えなければならない。場合によっては評価額を減らせる可能性があるからだ。

 

これらは役所の都市計画課や道路整備課、建築課で確認することができる。つまり、土地の総合評価は、地域全体の開発計画も含めて決まる、ということだ。

 

そして、相続税の適正な節税とはほとんどの場合、土地の実勢価格と評価額とのギャップを利用して行われる。

 

1億円の財産があるとする。これを相続する場合、現金のままなら相続税評価額はそのまま1億円だ。しかし、実勢地価1億円の土地を買えば、相続税評価額は、公示地価の8割程度とされる路線価で決まる。従って、現金より土地の方が、少なくとも2割以上の節税効果を得られることになる。

 

また、路線価には「広大地」「不整形地」などさまざまな減額規定があるので、評価額がさらに下がることもある。

地価によっては、評価額が逆転することもあるので注意

ただし、実勢地価は常に変動する。路線価は実勢地価を後から追いかける性格の指標のため、地価が上がっている時と、下がっている時で評価額ギャップが逆転し、節税効果が得られないこともあるので要注意だ。

 

本連載のテーマは「高齢化時代の相続税対策」。誰もが長生きする時代、認知症などで相続手続きができなくなる前に、余裕をもって生前対策をしましょう、と提案している。そのためには相続財産の明細を作り(財産の棚卸し)、土地や建物など相続財産にかかる相続税の仕組みと、減額規定を正しく知っておく必要がある。

本記事は、毎日新聞のニュースサイト「経済プレミア」に2015年6月から連載されている「高齢化時代の相続税対策」と、同名の書籍(毎日新聞出版刊)を元にしています。その後の税制改正などには対応していない可能性もありますのでご了承ください。

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

廣田 龍介

毎日新聞出版

相続税が増税され、富裕層でなくても相続の正しい知識と対策が必要な時代になりました。少子高齢化・長寿化で生前対策の重要性も増しています。あなたの大事な資産を生かす方法を、税理士の廣田龍介さんが指南します。毎日新聞…

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