今回は、相続に際して税務当局が特に厳しく調査する「無記名割引債」の概要を見ていきます。※本連載は、エクスプレス・タックス株式会社の代表取締役で、税理士の廣田龍介氏による著書、『事例でわかる高齢化時代の相続税対策』(毎日新聞出版)より一部を抜粋し、相続の基本的な知識を、事例を交えながら紹介します。

悪質な脱税と見なされる、割引金融債の申告漏れ

今回は、相続に際して税務当局が厳しく調査することで知られている「無記名割引債」について説明する。

 

2014年1月30日の新聞に、こんな記事が掲載された。「父親の遺産である無記名の割引金融債を申告せず、約8000万円を脱税したとして、東京国税局が相続税法違反の疑いで、東京都内の男性を東京地方検察庁に告発したことがわかった」――。

 

割引金融債(割引債)の申告漏れは、見つかれば重加算税が追徴されるほど、悪質な「脱税」と見なされている。さて、どんな債券なのだろうか。

課税当局が厳しくチェックするのは、現物保有の場合

割引債とは、額面金額から一定額を差し引いた価格で購入できる金融債のこと。償還時には額面金額を満額受け取れる。割引国債のほか、ワリコー(みずほ銀行)、ワリショー(商工組合中央金庫)、ワリノー(農林中央金庫)などがある。

 

発行する金融機関に行って購入するが、無記名のまま現物の証券を保有するか、住所、氏名を伝えて保護預かりをしてもらうかのどちらかを選べる。無記名の場合、正当な所持人が所有者である。

 

課税当局が厳しくチェックするのは、現物保有の場合だ。現物は現金と同じ価値があり、しかも無記名なのでなくしたらおしまい。所有者は現物を紛失しないよう、また満期日を忘れないようにしておかなければならない。その「印」を税務調査でチェックされやすいのだ。

本記事は、毎日新聞のニュースサイト「経済プレミア」に2015年6月から連載されている「高齢化時代の相続税対策」と、同名の書籍(毎日新聞出版刊)を元にしています。その後の税制改正などには対応していない可能性もありますのでご了承ください。

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

廣田 龍介

毎日新聞出版

相続税が増税され、富裕層でなくても相続の正しい知識と対策が必要な時代になりました。少子高齢化・長寿化で生前対策の重要性も増しています。あなたの大事な資産を生かす方法を、税理士の廣田龍介さんが指南します。毎日新聞…

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