今回は、「無記名債権」を利用した脱税行為は、税務調査でどのように問い詰められるのかを見ていきましょう。※本連載は、エクスプレス・タックス株式会社の代表取締役で、税理士の廣田龍介氏による著書、『事例でわかる高齢化時代の相続税対策』(毎日新聞出版)より一部を抜粋し、相続の基本的な知識を、事例を交えながら紹介します。

現金の多額引き出しがある場合、割引債購入が疑われる

相続の際、現金はその金額で相続税評価されるので、ただ持っていても何の節税にもならない。そこで納税者は何かを買って現金を減らそうとする。

 

税務調査ではまず、現金の動きをチェックし、相続財産が何に変化したかを調べる。銀行口座から多額の現金が引き出されていて、しかも使い道が不明な場合、まず割引債の購入を疑うのである。

 

税務当局はこの場合、現金が引き出された日に発行された割引債を、発行銀行で徹底的に調べる。無記名購入の場合、金融機関は住所、氏名を明かさない客についてその風貌や性別などを記録しているため、税務調査で把握されやすい。

 

どの割引債を購入したのかあたりを付けた後は、現物探しである。手帳やノート、日記帳、机の引き出しに満期日がメモされていることが多い。もし見つかれば「この日付は何ですか」と、調査官に厳しく問い詰められることだろう。

悪質な場合は刑事事件に発展することも

現物も身近なところに保管されていることが多い。自宅や会社の調査で、書斎の机、本棚、金庫、ロッカー、冷蔵庫の中、キッチン収納庫、タンスの中まで探し回ることがある。現物や証拠を見つけるまでは調査は終わらず、深夜に及ぶこともある。

 

この場合、顧問税理士はもちろんクレームをつけるが、調査対象が無記名債券の場合、「終わらせたかったら現物を出すよう相続人に話せ」と強硬だ。

 

納税にまつわる不正行為について、税務当局の追及は本当に厳しい。あまりに多額で悪質な場合は、前回紹介した記事のように検察庁に告発され、刑事事件に発展する。王道の相続対策こそが、節税につながるのである。

本記事は、毎日新聞のニュースサイト「経済プレミア」に2015年6月から連載されている「高齢化時代の相続税対策」と、同名の書籍(毎日新聞出版刊)を元にしています。その後の税制改正などには対応していない可能性もありますのでご了承ください。

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

事例でわかる 高齢化時代の相続税対策

廣田 龍介

毎日新聞出版

相続税が増税され、富裕層でなくても相続の正しい知識と対策が必要な時代になりました。少子高齢化・長寿化で生前対策の重要性も増しています。あなたの大事な資産を生かす方法を、税理士の廣田龍介さんが指南します。毎日新聞…

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