そもそも「一棟所有」はハードルが高いが…
ここまでで京都不動産のメリット、そしてそれを最大限に生かした物件はどのようなものか、買うべき物件について説明してきました。では実際にこうした京都不動産を購入するにはどうすればいいのでしょうか?
投資家の方は、よく「一棟物の中古マンションが欲しい」と言います。確かに区分よりも一棟物のほうが自分の裁量で運営しやすく、投資効率は上がります。しかし、ただでさえ物件供給量の少ない京都では、一棟物のアパートやマンションの中古物件の流通はとても少なく、紹介はほぼ不可能に近い状態です。
そう伝えると「中古の一棟物がないなら、土地から入手して自分で一棟物を建てたい」と思う人がいるかもしれません。しかし京都不動産の新築一棟はなかなか手に入れるのが難しいと言わざるを得ません。
これまで私は京都市内でマンション建設に当たり、難航してきた不動産業者をいくつも見ています。高さや外観の規制が厳しい上に、近隣との調整がうまくいかず、最悪の場合、採算が合わずに撤退したケースすら見てきました。
京都地場でなくてもマンション建設にはそれなりに実績のあるプロの業者でさえ、撤退を余儀なくされるのです。地主で、最初から土地があり資本力も地縁もあるという方なら別ですが、個人の方が京都で土地を仕入れて一棟物を新築し、成功させるのはかなり高いハードルになります。
これまでに請われて私も特定の顧客に一棟物の新築をやったことはありますが、あくまでもレアケースで通常はやっていません。京都ならではの細かく厳しい規制に合わせて新規物件を開発するには、手間も時間もかかりますが、それに応えられるだけの人員と労力が割けないからです。
文化財・埋蔵物…京都ならではの障害にも注意
他の地域では、土地を見て道路幅、建ぺい率、容積率、高さ制限などの数値を当てはめれば建てられる物件のボリュームがわかり、ざっくりした事業計画が立てられます。しかし京都の場合は、ざっくりで見切り発車をしてしまうと大けがをします。
私は以前、外部の一級建築士に設計をお願いしていましたが、それでは間に合わないので、現在は自社で一級建築士を抱え、開発計画からマンション設計までを行っています。そして用地があるとすぐプランを入れ、容積率はもちろん、高さや景観の規制にかかっていないか、近隣は大丈夫か、文化財や埋蔵物、土壌汚染はないかなど、最初から細かく詰めていきます。どれか一つでも引っかかると、計画そのものが頓挫してしまうからです。
京都では、まず採算の合う土地を探すことが難しい上に、規制の中で建てることも難しい。そもそも、大規模な物件は建てられないので、事業として採算が合うかどうかのせめぎ合いです。その中で、優良物件に仕上げることはさらに難しいのです。
結論としては、個人が京都で収益物件を持つなら、一棟物ではなく区分のマンションのほうが確実で、かつローリスクということです。もちろん、区分所有だからといって京都不動産のメリットがなくなるわけではありません。