個人情報をある程度公開し、相手からの信頼度を高める
交渉する不動産会社の立場が、「元付業者」であれ「客付業者」であれ、ご自身の許容範囲の限り、できるだけ多くの皆様自身の個人情報を開示することをお勧めします。また、相手は一不動産屋ですが、誠実に向き合うこともお勧めします。
「電話でしか話をしていない相手に年収や資産、勤務先なんか教えたくない」
「買主なのに、先にこちらから誠実に向き合うのか」
と思われるかもしれません。でも、ある程度の個人情報を公開し、誠実にお付き合いした方が圧倒的にお得です。その理由を説明しましょう。
仮に私のアパートが、皆様にとって、どうしても買いたいような価値がある物件で、私が「非公開」で売りに出したとしましょう。
そもそも皆様は、永富君か、彼が声をかけた数社と付き合っていなければ、この物件の情報すら入ってこないわけですが、偶然にも、永富君が声をかけたAという会社とお付き合いがあったとします。
Aは不動産屋ですから、「この物件がいい物件であること」も「いい物件はすぐに売れてしまうこと」も、当然分かっています。
また「いい物件だから必ず売買は成立するチャンス物件」であると同時に、いい物件だからこそ、早く買手を見つけなければ、他の人に先を越されるという状況になります。
Aの立場に立つと、この物件について自分の知っている顧客に声をかける時、どういう順番で声をかけると思いますか?
Aにとっては、誰に売っても得ることができる仲介手数料は同じです。より買う確率の高い人に声をかけるのが、最優先事項です。
Aの顧客リストを調べると、
1.名前や住所程度しか把握していない人
2.口頭で年収や勤務先を聞いている人
3.PDF等で源泉徴収等の個人情報を見せてくれている人
この中だと、まず間違いなく、3番の人から声をかけます。
「自分の言葉に責任を持てる人」と交渉を
先にも話したように、冷やかしや興味本位で不動産会社と接触する人はたくさんいます。また、永富君から聞いた話によると、見栄を張って実際より高い年収を言う人が多いので、口頭で聞く年収は参考程度に考えているそうです。
3番の人の年収には嘘がないので、買えるかどうか判断できますし、源泉徴収まで見せてくれていることで、本気で購入したい、という意欲を感じます。
また中古アパートでしたら、年収的に買える人はたくさんいます。ただ買うと言いつつ、最後の最後に「買わない人」と判断する人はたくさんいます。
このこと自体は悪いとは思いません。何千万円もの借金をするわけですから、最後に怖くなったり、より慎重になる気持ちはよく分かります。
でもAにとっては、非常に困るのです。最後の最後に買手を失うということは、この局面までくると、彼らも二股はかけていませんので、今回の物件を仲介できない結果に終わります。
不動産屋は、一般人が最後に心変わりするリスクを十分に認識しています。ですから、できるだけ「誠実な人」つまり「自分の言葉に責任を持てる人」との交渉を望みます。
Aの立場から我々を見たとき、ある程度の個人情報を公開し、誠実に対応している方が、よりいい物件に出会え、優先的に交渉してもらえる可能性が高いことが理解できたと思います。
また、これは「非公開物件」だけでなく「公開物件」においても同じです。「公開物件」は誰でも扱えます。皆様のもとにも、公開物件なら、同一物件で複数社からオファーがくると思います。
「公開物件」の場合は、皆様が優先的に選ばれていないと感じたなら、不動産会社を代えて交渉すればいいだけです。いろいろと代えていくうちに、いつかは皆様を優先交渉相手と位置づける会社は出てきますから、この物件においては問題ありません。
でも、皆様に代えられた不動産会社も「非公開物件」は持っています。今現在、いい物件を持っていなくても、この先、彼らが「元付業者」になる物件は出てきます。
その時、最優先交渉相手になれるよう、たとえ可能性の薄い「公開物件」の業者であったとしても、誠心誠意、お付き合いした方が、皆様にとっていい結果が出やすいと思います。