前回は、留学生ボランティアの活用による「口コミ」情報発信の成功例について取り上げました。今回は、口コミを発信する「留学生ボランティア」の集め方・選び方について見ていきます。

事業の成否を決めるのは、留学生の情報発信力

今回は、口コミ発信プロジェクトの具体的な進め方を見ていきます。

 

まず取りかかったのは、情報発信の担い手となる留学生ボランティアの募集でした。この事業の成否は、留学生たちの力量によって大きく左右されます。彼らが旅行先で見つけた美しい景色や美味しい食べ物、実際に行った人でなければわからないような穴場スポットなどを魅力的にレポートしてくれれば、多くの人が興味を持ってくれるからです。そこで重要なのは、「どのような留学生」を「どのように」選ぶかということでした。

 

私たちはまず、名古屋大学、愛知大学、愛知学院大学の留学生センターや、愛知県内で学ぶ留学生に宿泊施設の提供を行っている国際留学生会館などで告知用のチラシを配布しました。

 

また、名古屋近隣以外で学ぶ学生を取り込むため、Facebook広告も実施。さらに、私の会社の留学生ネットワークなどでも募集を行いました。告知期間は、2015年6月下旬から7月下旬までの約1カ月。その結果、アジア圏を中心とした16か国から、全部で35人の募集が集まりました。募集の時点で設けていた条件は、次の通りでした。

 

●2015年度いっぱいは日本に滞在している

●英語ができる

●Facebookアカウントを持っている

 

そして、続く書類審査の段階では、次の条件で絞り込みを行いました。

 

● 訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン地方連携事業)の20か国(韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペイン)の出身である

● Facebookでの友達が最低でも80人を超えている(できれば200人以上が望ましい)

● Facebookでの活動が活発で、頻繁に更新・写真のアップロードをしている

● 英語でのコミュニケーション能力が十分に高い

● Facebook上で、過去に誹謗中傷のコメントをした経験がない

● 留学生の出身エリアに偏りがないよう、バランスをとる

旅行好きでも「筆不精」では意味がない

私たちが最も重視したのは、留学生の情報発信力です。その人が書いた記事が多くの人に届き、読まれるほど、プロジェクトの効果は高まります。また、せっかく旅行をしても筆無精で記事を書かなければ意味がありません。そこで、Facebook での友達が多く、かつ記事や写真を頻繁にアップロードしていることが大切なのです。

 

候補者一人ひとりとの面接では、個人情報を収集する許諾を得た上で、下記のような質問をしています。

 

● 自己紹介

● なぜ日本に来たのか

● 日本(特に中部地方で)で旅行したことはあるか

● 好きな観光スポットはどこか・Facebookでの活動はどの程度か

● 一眼レフカメラを持っているか

 

好きな観光スポットについて聞くと、旅行がどの程度好きなのか、おおよその判断ができます。旅行が本当に好きでフットワークよく旅をする人は、有名な観光スポットではなく、さほど知名度の高くない場所を挙げるケースが多いのです。そうした留学生を選べば、記事で取り上げる観光スポットが他の人と重複しづらくなるでしょう。また、旅行をする回数が多く、よいレポーターになる可能性も高いと期待できます。

一眼レフカメラを持っているかも重要なポイント

一眼レフカメラを持っているかという質問も、採否をかなり左右します。SNSにおいて、長い文章は好まれません。特に観光に関する記事の場合は、言葉で長々と説明するより目をひく写真を掲載する方がずっと効果的なのです。事実、プロジェクトがはじまってからは、城や寺院、日本ならではの自然風景、忍者や芸者さんなどインパクトのある写真を載せた記事の方が、たくさんの「いいね!」を獲得していました。

 

コンパクトカメラや携帯電話でも、きれいな写真を撮ることは可能です。ただ、一眼レフカメラを持っている留学生の方が、きれいな写真を撮りたいという熱意や、撮影のセンス・技術を持ち合わせている傾向が強いと感じます。

 

一眼レフカメラの有無から、その人の経済状態も垣間見ることも可能です。一眼レフカメラは高価。それを買えるということは、自費で旅行をする金銭的余裕があると判断できます。このプロジェクトでは、学生にボランティアとして参加してもらいますので、自費でたくさん旅行に行ける留学生を優先したいと考えていました。

 

余談ですが、留学生を面接する際には「相手のいうことを鵜呑みにしすぎない」という点に注意が必要です。一般的に、日本人は面接の場で謙虚になりすぎアピールが上手にできない傾向がありますが、外国人は逆です。自分自身を売り込もうとして、話を膨らませすぎるケースがままあるのです。そこで、相手の話の中でどこまでが本当で、どこからが誇大表現なのか見抜く目が必要になるでしょう。

 

私の会社のように外国人とのコミュニケーションに慣れた企業なら問題ないでしょうが、不慣れな企業・地方自治体などの場合は、対策を考えておくことが必要になるかもしれません。

 

また、外国人留学生との文化的ギャップを埋める工夫も必要です。私たちは面接の最初に、5分間ほどかけて事業についての説明を行い、さらに5分間かけて個人情報についての確認をとりました。外国人の中には、肖像権や著作権に対する意識が高い人もいます。また、感受性が異なる部分も多いのです。最初の時点で細かいすり合わせを行っておけば、その後のコミュニケーションはスムーズに進められるでしょう。

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加藤 啓介

幻冬舎メディアコンサルティング

訪日外国人の急増によって、インバウンド施策は盛り上がりを見せています。2015年1-9月の訪日外客数は1,448万人、すでに2014年1年間の訪日外客数1,340万人を上回っています。 しかし、今後円高や中国株安によって、今までのよ…

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