「どの費用を削減するべきか」などがハッキリとわかる
伸びてる会社の経理は、総じて異常に細かいという共通点があります。伸び悩む会社の経理が、得てしてどんぶり勘定になってしまうのとは対照的です。
経理が細かいというのは、簡単に言えば、経費の勘定科目が細かく分かれているということです。
たとえば、「水道光熱費」とするのではなく「水道費」「電気代」「ガス代」と分かれていることを意味します。同じように「通信費」ではなく、「固定電話代」「携帯電話代」「プロバイダー使用料」と分けるべきですし、「旅費交通費」ではなく「電車代」「高速道路代」「タクシー代」「宿泊費」と分けるということです。
では、なぜ経理が細かいと経営が伸びるかについてお話ししましょう。
会社が利益を出すことの大切さについては、第2章「共通点8」でお伝えしました(本書籍をご覧ください)。利益とは、売り上げから経費を引いたものですから、同じ売り上げでも経費が少なければ少ないほど、利益が残るわけです(当たり前ですよね)。
さて、社長が経費を削減したいと考え、月次の損益計算書を見たとしましょう。たとえば、「通信費」が毎月20万円かかっていることが分かっても、これをどうやって削減したらいいかすぐに思い浮かびません。
しかし、「固定電話代が5万円」「携帯電話代が12万円」「プロバイダー使用料が3万円」かかっていることが分かったら、最もシェアの大きい携帯電話代から見直そうと目をつけ、プランを変更すれば通話料をもっと安くできるのではないかと、具体的な方策を検討できるのです。
月ごとのばらつきについても同じです。「旅費交通費」が毎月100万円かかっていたとします。細かい科目に分かれていなかった場合、「うちの会社は毎月大体100万円の交通費がかかるのか」という分析で終わってしまいます。
しかし、細かい科目に分けた経理を行っていれば、費目別に見て6月、9月、12〜2月はタクシー代が多いこと、3月、4月、10月は宿泊費が多いことなど、細目ごとにピークが違うことに気付くことができます。雨が多い6月、9月や、外を歩くのが寒くなる冬場は、ついタクシーでの移動が多くなっていたのです。
また、年度の切り替え時期は、半期ごとに注文が集中するので家に帰れず、ビジネスホテルに泊まっている社員がいることも判明しました。
このような分析ができれば、タクシーを利用してもよい基準をつくったり、遅くまで残業しなくてもすむような人員配置をすることによって、タクシー代や宿泊費を大幅に削減できる可能性が出てきます。
経費がおおざっぱだと、このような分析ができず、毎月大して出費のない高速道路代をけちり、「できるだけ一般道を使おう」などという施策をとって、社員から不評を買ったりしてしまうのです。
さらにいえば、このような分析は四半期ごとよりは月次、月次よりは週ごとにやるべきです。それだけ細かい分析ができますし、改善点が見つかればすぐに手を打つことができるからです。
経費だけでなく、利益もできるだけ細かく分析できるようにするといいでしょう。
たとえば、あなたの会社の売り上げが1億円で5パーセント(500万円)の利益が出ていたとします。取引をしている顧客はおおむねA社、B社、C社の3社で、そのうちA社からの売り上げが6000万円、B社が3000万円、C社が1000万円だったとします。
この場合、つい売上額の6割を占めるA社を大事にして人員を割き、フォローを優先してしまいがちです。
しかし、それぞれの顧客に自社の人員や時間、経費をどれだけ割いているのかを測定できるようにしたら、どのようなことが分かるでしょうか。
伸びてる会社では必ず、顧客ごとの採算を見えるようにしています。顧客ごとの採算が見えるようになると、たとえば、対A社の利益は50万円(利益率1パーセント)、B社は200万円(利益率7パーセント)、C社は250万円(利益率25パーセント)であることが分かったりするわけです。
それまでは、A社はたくさん仕事をくれるのだから、少し単価が安くてもがまんして仕事をしようと考えていたのですが、顧客ごとの利益率が分かれば、A社とは強気に価格交渉をできるようになりますし、C社との取引をもっと増やせば、自社の利益をもっと増やすことができると気付くことができるのです。
利益を視覚化し、効率的なビジネスを行う
コンビニやファミレスなど、事業所から出るゴミをルートで回収しているY社は、最近、ゴミの収集車1台ごとにタブレット端末を配りました。
というのも、これまではゴミを出すお客様ごとに回収の単価を決めていたのですが、1つのルートに複数のお客様がいるため、お客様ごとの単価が見えなかったのです。
このタブレットに、回収を担当するスタッフがゴミの量を入力していくことによって、お客様ごとのゴミの量、売上金額とゴミ1㎏当たりの利益額を測定できるようになりました。
そのことによって、取扱量が多くても利益が出ていなかったり利益が薄かったお客様に対しては、代金の値上げをお願いしたり、場合によっては今後の取引をお断りするという対応を取ることができ、会社の利益率を大幅にアップすることができたのです。
私の事務所でも、顧問契約をいただいているお客様ごとに、毎年弁護士がどれくらいの時間を使ったかを測定できるシステムを導入しています。これにより、本当に事務所に利益をもたらしてくれるのはどのお客様なのかも分かりますし、「つい好きなお客様にだけ時間を多く使ってしまう」ということも防げるようになりました。