「値決めは経営」・・・客が満足して買う値段を考え抜く
適正価格を考え抜かなければならないということを、稲盛氏は「値決めは経営」という言葉で表現しています。
お客様が満足して買ってくれる最高額を考え抜いて定めるのはとてもむずかしいことで、だからこそ値決めは部下に任せず社長がやるべきだというのです。
客が得る「感動の量」を値段に反映
この値決めの話で、私がとても印象に残っていることがあります。それは、関西で造園業を営むK社のお話です。
庭木の伐採や芝刈り、庭石や庭池などの工事を行う造園業は、土木業に分類されます。この業界での値付けは、人工計算でされるのが一般的です。
たとえば、その工事が、3人の職人で7日間かかる作業で、1人工(職人さんの1人1日あたりの手間代)が1万4000円だったとすれば、通常、値付けは次のようになります。
1万4000円(1人工)×3(人)×7(日間)=29万4000円
しかし、K社では造園業を、「家(や寺)から見える景色をつくる仕事」と定義したのです。これは、あたかも「画家が絵を描いて値付けする」ようなものです。
絵画の価格は、絵の具の値段や、描くのにかかった時間で計算されるわけでなく、その絵の素晴らしさが心を動かす量で決まります。同様に、造園も景色をつくる仕事なのだから、その景色を見ることによって得られる感動の量に値段を付けることにしたというわけです。
こうすることで、同じ人工で作業をしても5倍も10倍もの値段が付けられるようになったそうです。