支払った保険料の一部を経費にして利益を圧縮
前回の続きです。オーナー経営者の生命保険の活用方法として、二つ目の、利益の繰り延べについて解説します。生命保険を活用すれば、会社の利益を保険という形でプールすることが可能です。その利益を将来、経営が悪化したときや大きな設備投資が必要になったときなどに活用できます。では、なぜ利益の繰り延べができるのでしょうか。
会社の利益は、そのまま現金で残してしまうと、その分、法人税が課されます。しかし、利益から保険料を支払えば、経費にすることができます。支払った保険料を全額経費にできるわけではありませんが、一部を経費にできるだけでも利益圧縮効果は得られます。
利益で車などを買ってしまえば、その資金は手元からなくなってしまいますが、保険料として支払った資金はなくなりません。将来の将来、満期保険金や解約返戻金という形で保険会社にプールされているのです。たとえば、逓増定期保険や定期保険、長期定期保険などに加入すれば、一定割合を経費にできるので利益の繰り延べ効果が得られます。しかし、どの保険に加入してもよいわけではありません。
解約返戻金に見合う「資金の使い道」を決めておく
逓増定期保険は、死亡保障額が徐々に増加していく定期保険です。将来の死亡保障額が大きくなりますが、保険料は毎年一定の金額です。従って、最初のうちに支払っている保険料の中から保険会社はより多くの資金をプールしておけます。中途解約した場合には、この資金が解約返戻金として返ってくるのです。
ですから、逓増定期保険は他の保険に比べて解約返戻金が貯まりやすいという特徴があります。しかし、返戻率のピークは5年から20年程度が多いので、30年、40年という長期の利益繰り延べには利用できません(ただし、2分の1損金型逓増定期保険の場合)。また、解約返戻金は受け取る時期によって金額が大きく異なります。よって、加入時にいつ解約をするか、綿密に計画を立てておく必要があります。
解約返戻金を受け取った年に、その資金を使う予定がなければ、法人税の対象となってしまいます。役員退職金や設備投資など、解約返戻金に見合う額の資金の使い道を決めておく必要があるのです。
条件次第では保険料を全額経費にできる定期保険
定期保険は、支払った保険料を全額経費にできるのがメリットです。しかし、全額経費算入が認められている定期保険は、①満期が70歳以下、または②105から加入年齢を引いて2で割った年数以内を保障期間とする定期保険、と限定されています。となると、年齢が65歳くらいになってから解約返戻金を受け取って役員退職金に使うとしても、解約返戻金がほとんどないという問題が発生してきます。
設備投資が必要になることがわかっていれば、利用価値があるかもしれませんが、退職金としては利用しにくいのが実情です。
一般的に、保障期間が95歳から100歳まで続く定期保険は長期定期保険と呼ばれます。この場合は、経費算入できるのは支払った保険料の2分の1になります。満期が長いので、オーナー経営者の退職金としても十分に活用できます。
長期定期保険の場合は、解約返戻金率のピークが緩やかに長く続くことが多いので、資金需要の時期にある程度の柔軟性が持たせられるのもメリットです。オーナー経営者が健康上の問題から加入できない場合でも、利益の繰り延べと割り切れば、若い役員に加入させておくのも一つの方法で、返戻率も良くなる可能性が高くなります。