納税者自身が、税への意識を高めていくことが大事
まず私の気持ちの中に湧き起こったのは、あまりに理不尽な税金となっている固定資産税の実態を、もう一度、なるべく多くの人にきちんと知ってもらおうという思いでした。そして考えたのが、その手段として本の出版と講演の開催です。
固定資産税という税金は賦課課税という納税者の知らないところで決められる税金で、納税者が実態を知る機会は少ないので、広く知らしめなければなりません。
納税者の多くは、手元に届く納税通知書を見て驚いたり諦めたりするだけで、そこに示されている数字がどのような根拠で示されているか知る由もありません。それに、詳細についてだれに聞けばよいかさえ知らないのです。
固定資産税をもっとまともな税にするためにも、まず、納税者にもっと関心を持ってもらわなければなりません。
財源確保に躍起になっている課税者側の役所には、もともと納税者に寄り添う気持ちなどありません。まず、納税者自身が自ら税への意識を高めていくことが必要だと思ったのです。
減額措置が突然廃止されることもある「固定資産税」
固定資産税は、突然高騰して納税者を苦しめるほか、知らないところでいろいろなことが勝手に決められ、納税者を戸惑わせています。
たとえば、今まで導入されていた税額の減額措置や負担調整措置が、ある年から急に廃止されてしまうことがあります。「今年から税額が上がりました」と急に告げられるようなことがあるわけです。そして、その理由について詳しい説明がありません。このような対応など、到底納得できるものではありません。
私は、住まいも仕事場もこうした固定資産税制改変の影響が一番出やすい東京の中心地に置いているため、評価替えの年を迎えるたびに、また理不尽な改変が行われるのではないかとハラハラしているのです。
[図表]東京都の土地に関する固定資産税の評価手順
こういった経過から、あのリーマンショック時の固定資産税の高騰に際して、納税者の一人として、もう声を上げるしかないと思い、行動を起こしたのです。
まず、2010年の年末に固定資産税の税制の告発本『固定資産税の暴走を止めろ!』を、そして2014年11月に、税制の現場に踏み込み、ルポルタージュ形式で、より固定資産税の問題を追及した『固定資産税は大衆強奪税』を上梓しました。また、本の出版と並行して、機会あるごとに講演やセミナーなども開催していきました。
本の出版や講演の開催は、多くの関係者に好意的に受け入れてもらえました。
固定資産税に関する書籍については、納税通知書の見方やその計算方法、税理士試験のための対策などハウツー本はいろいろと書店の棚に並んでいますが、税制の告発本についてはほとんどなく、少し毛色の違う本としていろいろな人が関心を持ってくれたのです。
本の中で私は、高額化した固定資産税のせいで生活を圧迫されて住んでいた家を手放さなければならなくなった納税者のことを記したり、住民の生活を支えていた地方の商店街が丸々シャッター街へと変えさせられてしまった話を紹介して、この税の理不尽さを訴えたり、この税の暴走がもはや他人事ではないことなどを訴えていきました。
そして、ブラックボックス化させて課税者が隠している固定資産税評価額の実態など、固定資産税という税金のあまり知られていない裏の姿を世の中に伝えることに挑んだのです。おかげで本の内容への反響は大きく、共感できるという声をたくさんいただきました。
また、税制の見直しを訴えて繰り広げていた私の活動に賛同したいという声も届き、激励や応援の手紙などもあって、自分の固定資産税についての悩みの相談に乗ってほしいという読者まで現れました。そして私自身も、これらのことに刺激を受け、新たに多くのことを学ぶことができたのです。