空家対策特別措置法の本当の狙いは税収アップ!?
2016年からは、法人税ほかさまざまな分野での税改正が取り組まれています。住宅に関する固定資産税関連でも、2015年辺りから次々に新たな法律が施行されています。近年、少子化の影響もあって、地方を中心に家を継ぐ人が少なくなって、住む人のいない空き家が増えてきています。
政府は、これらに対して倒壊するおそれがあるとして、有利にリフォームができる空家対策特別措置法という法律を制定しました。
言葉上では有利さを謳った法律ですが、内容は、危険な空き家をそのままにしておくと更地と同じ宅地の6倍(200平方メートルの場合)もの固定資産税を取りますよという、増税色の強いものです。
それが嫌ならさっさとリフォームして使いやすくして、それなりの税金を払いなさいと続いていきます。実際は、更地の固定資産税評価額は公示価格の7割の課税標準額によるため6倍×7割=4.2倍となります。
それにしても、空き家に対して倒壊のおそれがあるとするのは唐突過ぎる気がします。空き家対策ならば、せっかく利用できる居住空間があるのならだれかに住んでもらおうと考えるのが先であるはずです。役所に求められるのは、空き家を埋めて有効利用するための支援のはずなのです。
この法律には、だれもがどこか胡散臭さを感じるのではないでしょうか。じつは、この空家対策特別措置法は自治体の税収を増やすためのカードにすぎません。
納税者にできるだけ住宅用地の課税標準の特例措置を受けさせないようにして、税収が減るのを防ぎたいということなのです。
空き家を解体して更地にして、その土地を売却するにしても解体費用がかかってしまいます。親の家を相続しても、この法律ができたおかげで、住居として利用していくか、をはっきりさせないと、何かと厄介になりました。
役所は、納税者に更地にしてもらって、土地を流通させたいと考えているはずです。土地を活性化させて、そこで新たに生まれる税金に期待を寄せているわけです。
自分が所有する土地や家なのに、お節介な役所のおかげで、納税者は新たな悩みを抱えなければならなくなりました。役所は、親切にも頭痛のタネも撒いてくれるのです。
住宅地を4分の1評価にすることで増税したい政府
ところで、人が住まないと固定資産税が6倍になるという理由はいったい何なのでしょう。
更地に戻すことで小規模住宅用地の特例が解除されるというのはわかります。しかし、そもそも6分の1となる特例の数字の根拠は何なのでしょうか。人が毎日生活している場所なので生存権的財産である、というのが6分の1という数値の根拠となるのでしょうか。
用地面積とも関連していて、時代ごとにさまざまな計算が行われてきたという話はあるようです。しかし一方では、この数値を使用して増税しても納税者が苦しんでいる様子はないなどと、納税者の顔色を窺いながらつけた数値であるとも言われています。
[図表]総住宅数、空き家数及び空き家率の推移
たとえば、スーパーマーケットの野菜売り場に並ぶ1本600円のダイコンに「本日特売日なので200平方メートル以下の住宅にお住まいの人には100円で販売します」というラベルが貼ってあったとしても、元の1本600円の根拠が示されない限り、安い買い物であるかは判断できません。
同じように、もし元の固定資産税の価額が何の根拠のないものであったなら、納税者はそのうち不信感を抱くようになります。ところが、最後のあがきというのか、今、国や自治体はダイコンの値引き前の定価の部分までも値上げしようとしているのです。
すなわち、国や自治体は住宅が建っている土地を6分の1評価から4分の1評価にして増税することを画策しています。
このようなことが考えられるようになったのも、あの悪名高い「7割評価」導入のせいなのです。1993年までは公示価格の1~2割程度だった評価基準(ちなみに筆者の土地の場合は3.5%)を7割に上げ、税率を1.4%のままにしたせいで評価額を何10倍もの価額にしてしまったという責任を負わずにいたためです。
納税者は、まさか自治体が最初から税収の目標額を決めているなどとは考えたくはありません。しかし、税額の計算に必要な評価基準などで具体的な数値を掲げるなら、きちんとした根拠を示さなければ納得できるものではありません。