課税者と納税者の意識には大きなギャップが存在
世界経済がリーマンショックに襲われ、日本にも未曽有の経済不況が及んでくると、予想通り調整できないことが起きました。
リーマンショックとは、2007年末のアメリカの中古住宅ローンの焦げ付き問題に端を発した世界的経済危機で、日本では、まず不動産投資や融資の落ち込みという形で現れ、その後、全国に不況の嵐を吹き起こしました。地価に対しては高騰をもたらし、納税者はその影響を受けた固定資産税に翻弄されなければならなくなりました。
本来ならば、時価である生きた価格を参考にして丁寧に決めなければならないはずの固定資産税の課税標準額を、机上の計算で無理に決めていこうとする課税者側の強引さや無謀さ、無神経さは、やはり納税者全体を苦しめることになってしまいました。
しかし、課税者側は、そのようなことにはまったく関心を向けていませんでした。まるで、「固定資産税くらいが日本経済全体の危機の犠牲になるのは仕方ないでしょう」とでも言っているみたいに開き直っていたのです。
課税者が思う以上に納税者は過敏に反応し、深刻に受け止めるものです。痛みを感じるのは課税者自身なのですから。
税負担の比重が一様ではない固定資産税
固定資産税に限らず、税は本来だれに対しても平等であるべきものです。たとえば、物品税はだれが同じ商品を買っても平等の比率で含まれているので問題ありません。
でも、固定資産税に関しては、税の負担についての比重が一様ではなく、どちらかというと富裕層に負担が少ない税ということが長い間言われてきました。
そして、バブル崩壊後にそのことによる影響が大きく出てきたために問題視され、そのズレを修正するという名目で、固定資産税にはさまざまな特例措置や負担調整事項が盛り込まれていきました。
人それぞれに違う事情をなるべく考慮した税になるように工夫を施したと課税者側は言うのです。
固定資産税をそのときの経済状況、社会状況に合わせるために行うとする評価替えは、3年に1度行われます。地価が下がっても、3年間は評価の高かったときの税金が課せられます。
第2年度、第3年度の課税基準は基準年度と同じとする、ということが税法に明記されています。そして、「当該土地と家屋の基準年度の価格が不適当、均等を失する場合は、類似する土地と家屋の価格に批准する」とされています。これは「時点修正」と呼ばれています。
時点修正は、標準宅地を不動産鑑定士に依頼して正式に作成されたものではなく、大雑把に作成されているという話もあります。その理由は、単に毎年正式に作成していたらお金がかかるからというものです。
こういった時点修正などがあっても、結局は、次の評価替えを迎えると、新しく奇妙な理屈のついた評価が現れて、再び高い税金を払わなければならなくなります。役所には、最終的に税収は下げたくないという気持ちが根底にあるようです。
もし、住民の数が減って全体の税収が減ったら、最終的には手持ちの強力なカードを一つ切ってくるのでしょうか。
そもそも固定資産税の評価方法が不透明なため、納税者は固定資産の価額について、どのような経緯でつけられたものなのか知りません。それに、決定後は一方的な通知となるため、それをどのような手順でだれに確認していけばよいかもよく知りません。
たとえ役所の資産税課を訪ねても、納税のための手続き方法などをマニュアル通り説明してくれるだけで、税の専門家が出てきて内容についての疑問にきちんと答えようとすることなどありません。
逆に、「税の相談コーナーではないので、難しい質問をしないでほしい」とでも言いたげな対応を受けてしまいます。結局は、ただ事務的に業務を遂行しているだけの部署なのです。
税の仕組みを複雑化させ過ぎて、自分たちでも把握できていないだろうというのも見え透いています。