景気等に関わらず安定的な税収が期待できる
そもそも、固定資産税の本質とは、どのようなものなのでしょう。それは、地方自治体が自らの財源として徴収する地方税という面から見ると、少しわかりやすくなります。
地方自治体の税収には、固定資産税のほかにも事業税といったものもあるのですが、世の中が不況になると、当然ながらこれらによる税収は減っていきます。世の中が不況で喘いでいるときに役所だけが潤うなど、あってはならないことです。
リーマンショックがきっかけとなった世界不況の際も、地方税は減収となってしまいました。しかし、破裂した水道管の補修や道路補修などをはじめ、自治体には納税者に対して最小限提供していかなければならない行政サービスがあるわけで、それを支える財源は確保しなければなりません。
そのようなときに頼らざるを得なくなるのが、賦課課税の固定資産税による税収となるのです。
自治体のふところ事情が苦しいときは、国から地方交付税といったものも支給されることになってはいますが、国自体も不況の煽りを受けて苦境に立たされていて、自治体を支援するほどの余裕はありません。自分で何とかしてほしいというのが本音なのです。
そこで、自治体が財源を何とか確保したいというとき、まず目を向けるのが固定資産税となるのです。なぜなら、固定資産税は自治体が自ら融通を利かせることのできる税金だからです。
人口の推移などによって税収が不安定となる住民税と違い、固定資産税は動かない土地や建物にかけられる税金なので、安定した税収が期待できます。それに、いざとなれば、課税者側の都合で税率を引き上げることもできるという最終カードも持っているわけです。
結局、固定資産税は、自治体が自らの財源を確保するため、狙い撃ちできる税金にしているということです。
税額のカラクリを納税者は知る由もなく・・・
固定資産税が自治体の融通を利かせることのできる税金になっているのは、賦課課税という課税制度をとっていることと切り離しては考えられません。
固定資産税は、納税者自身が自分で計算して申告する税ではなく、課税者側の役所が計算して送ってくる納税通知書にしたがって税金を納める賦課課税制度をとっているので、税額のカラクリを納税者は知る由もありません。課税者側でちょっと手を加えたりしても納税者には気づかれないので、役所がどのような仕組みにしようとわかりません。
そして、もう一つ見逃せないのは、そのことが逆のことも示しているということです。つまり、役所の担当者が本来しなければならないことをしないでいたり、ミスしてしまったことを黙っていても、納税者に気づかれることはありません。裏で内緒にしておくことができるのです。
何事も秘密裡にしておこうという姿勢が、やがては、今社会を騒がせている過大徴収事件へと通じていくのです。