今回は、ソーシャルレンディングの利回りと保全性が高い理由を見ていきます。※本連載では、ソーシャルレンディングに特化した国内唯一の専門メディア「クラウドポート」代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏が、急成長するソーシャルレンディングの最新事情をご紹介します。

独自の案件調達ルートと柔軟な融資審査基準

現在、ソーシャルレンディング業界全体の期待利回りは平均8% (※)と、複利で運用すれば10年で元手が2倍以上になるほどの高い利回りとなっています。その一方で、過去3年間、貸倒れは1件も発生しておらず(2017年3月末現在 延滞は含めません)、他の金融商品と比較しても相対的に高い保全性を維持していると言えます。

※年利、税引前。 当社が集計対象としている18社が募集したファンドの平均利回り(2016年7月〜12月)。

 

なぜ、ソーシャルレンディングは高い利回りと保全性を共存させることができているのでしょうか。その理由は、インターネットを活用することによる低コスト運営、そして銀行とは異なる柔軟な融資審査態勢にあります。

 

ソーシャルレンディングは店舗を持たず、営業員も必要としないため、既存の金融機関に比べて人件費や地代家賃を低く抑えることができます。その分、運用で得た利益の多くを投資家に分配することができています。

 

また、ソーシャルレンディングは独自の案件調達ルートと柔軟な融資審査基準を合わせ持つことで、「返済の確実性は高いが、既存金融機関からの借入れが困難な案件」を見つけ出して融資をおこなっています。ソーシャルレンディングは利回りが高いからといって、必ずしもデフォルトリスク(※)の高い案件に対して融資をおこなっているわけではないということです。

※デフォルトとは、債務者の破産などにより、猶予期限内に債権の元本や利息の支払いが行われず、債務不履行となること。

借り手企業はなぜ銀行から融資を受けないのか?

例えば、投資家への年利回りが8%のファンドの場合、ソーシャルレンディング事業者から資金需要者(借り手)への貸出金利は10~14%程度となります。この金利水準で貸し出しができれば、事業者の取り分を差し引いても、8%の利回りを無理なく投資家に支払うことができます。

 

ここでひとつ疑問が生じます。なぜ借り手企業は、この低金利時代にわざわざ金利の高いソーシャルレンディング事業者からお金を借りるのでしょうか。

 

それには、銀行の硬直化した融資審査態勢とビジネスモデルが関係しています。銀行はかつて不良債権処理に苦しんだ経験から、非常に厳しい審査基準を設けています。その結果、審査の柔軟性が欠如することになり、事業者が抱える多様な資金ニーズに応えられていません。健全な財務状況であっても融資を断るケースは多数存在します。

 

例えば、業歴の浅い企業や前期赤字の企業は、現時点でしっかり利益を出せていたとしても融資を受けることは困難でしょう。また、短期間、少額の融資案件も審査が通りづらいのが現状です。

 

銀行は利幅が薄いこともあり、大きな資金を長期で運用することを重視します。せっかく手間をかけて審査を行っても、短期間で返済されてしまえば、収益は小さくその手間に見合わないのです。

借入れを希望する企業は後を絶たない

一方で、ソーシャルレンディングは短期間、少額融資と相性が良く、好んで融資を行います。また、融資額と同価値の担保さえ確保できれば、業歴や事業規模に関係なく融資を実施する傾向にあります。

 

成長性、収益性の高い企業にとって、資金不足を理由に事業の足止めを受けることは大きな機会損失につながります。多少、金利が高かったとしても、借りられるところがあるなら借りたいという企業は数多く存在するのです。事実として、ソーシャルレンディング事業者への借入れ希望は後を絶ちません。

 

ソーシャルレンディング事業者は、あくまで返済の確実性のみを重視し、それ以外の審査項目については柔軟なスタンスをとることで既存金融機関との差別化を図り、新たな資金調達先としての存在感を高めているのです。

 

<Point>

●業界全体の平均期待利回りは8%、貸し倒れは3年間発生してない。

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