今回は、ソーシャルレンディングにおけるリスク管理について見ていきます。※本連載では、ソーシャルレンディングに特化した国内唯一の専門メディア「クラウドポート」代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏が、急成長するソーシャルレンディングの最新事情をご紹介します。

慎重な融資態勢の銀行でも貸し倒れリスクは明確に存在

利回りも保全性も高く、良い点ばかりが聞こえるソーシャルレンディングですが、銀行預金とは異なり、貸し倒れが起こると元本を毀損する可能性があります。実際にはどのくらい貸し倒れが起こっているのでしょうか。今回は、ソーシャルレンディングの貸し倒れ事情と損失リスクを抑える方法を見ていきます。


ソーシャルレンディングにおける貸し倒れとは、業績不振などを理由に借り手企業が債務を果たせず、損失となることを指します。貸し倒れが起こると、投資元本の一部、または全額が償還されず投資家は損失を被ることになります。

 

返済遅延とは満期までに償還・分配を行うことができず、返済期日を後ろ倒しにすることです。元本の返済が不能な状態を意味する貸し倒れとは異なり、返済遅延はあくまでも将来的に元本の償還が行われる前提です。

 

ソーシャルレンディングの保全性が高いと言われる背景には、貸し倒れ率の低さにあります。実際に業界全体の過去3年における貸し倒れ発生率は0%です(※1)。一方、返済遅延は起こっています。しかし返済期日を延長させても、いつまでも返済が見込めなければ、最終的に貸し倒れとなる可能性もあります。投資家にとっては、貸し倒れ同様、返済遅延も避けたい状態です。

※1 2017年1月20日時点。クラウドポート調べ。

 

ソーシャルレンディング投資家の中には、貸し倒れが起こることを想定せずに投資をしている方もいるかもしれませんが、その考えは危険です。石橋を叩いて渡るほど慎重な審査態勢をとる銀行の法人向け融資でさえ、一定の確率で貸し倒れが起きます。そのことを考慮すると、ソーシャルレンディングで永久に貸し倒れが起こらないと考えるのは非現実的です。

 

ソーシャルレンディング事業者の増加に伴い、これまで以上に貸し倒れが起こる可能性は高まっています。貸し倒れは起こるものであるということを前提とし、万が一のために損失を限定的なものにする工夫が欠かせません。

投資の前にまず「担保の有無」の確認を

損失をできる限り抑える方法として分散投資が何よりも大切ですが、これまでの連載でも度々お伝えしてきましたので、今回は「担保・保証の重要性」について説明します。

 

担保とは借り手が返済困難な状態になった際に、債務を果たすため借り手が貸し手に差し出すものを指します。ソーシャルレンディングでは不動産や株、売掛債権などを担保とするファンドがよくみられます。

 

貸し倒れが起こった際には、貸し手が担保として受け取った物や権利を売却することで得た資金を返済の原資とします。一方、担保が無い場合には、損失分をダイレクトに投資家が負うことになります。

 

ソーシャルレンディングでは、必ずしも全てのファンドに担保が設定されているわけではありません。担保の有無は通常、各事業者のファンドページで確認できます。担保付きファンドを選ぶことで、いざという時の損失額を抑える一助となります。


一方で、担保が設定されているから絶対的に安心というわけではありません。担保の評価額にも注意が必要です。担保は元本の全額保全を確約するものではありません。担保の評価額が募集金額以下のファンドも多数あります。1000万円の募集金額に対して担保の評価額が700万円と仮定した場合、貸し倒れが発生した際には、残り300万円分については毀損することになります(※2)。

※2 評価額通りに担保を売却できるものとする場合

 

担保付きファンドに投資する際は、評価額が募集額をカバーできているかという点もみておきましょう(※3)。

※3 すべての事業者、ファンドが担保評価額を公開しているわけではありません。

リスク管理で肝心なのは「投資実行」までの細やかな工夫

有事の際には担保を売却して返済原資の捻出を試みます。しかし、評価額は変動があることにも留意が必要です。担保の評価額はあくまで募集時点でのものです。例えば建物を担保としている場合、不動産市場が下向くと担保価値が目減りするかもしれません。反対に担保価値が高まるケースもあります。

 

担保の種類によって、価値の変動要因は異なります。担保資産が偏りすぎるとリスク分散が効果的に効いていない状態になります。ファンドを検討する際には、担保となる資産の性質を複数に分散するという視点を持つことが大切です。


保証とは、借り手が返済不能になった際に第三者が弁済の責任を負うことを指します。ソーシャルレンディングでは、借り手企業の代表取締役が保証人となることがよくみられます。保証人である代表者が個人で損失分を補填する義務を負うことになるため、それが抑止力となり債務不履行の可能性を低減する効果が期待できます。

 

一方で、実際に債務不履行が生じた場合、本当に代理弁済できるのかという点に関してはいささか疑問が生じます。自身が代表を務める会社が債務不履行の状態にある場合、その代表者もまた経済的に困窮している可能性が高いからです。つまり「代表者保証」は債務不履行を未然に抑止する効果は期待できても、実際に債務不履行が生じた際の保証能力に関しては、現物が差し出される「担保」に比べて劣後する印象を受けます。

 

ただし、中には親会社である上場企業が債務を保証する場合や、潤沢に資産を持つ第三者が保証するというケースもあります。最近では保証会社が保証を付けているファンドもあります。一概に保証と言っても様々な種類がありますので、保証内容までしっかりと確認することをおすすめします。なお、保証の有無はファンドページに、担保とは別に記載されていることが多いです。

 

ソーシャルレンディング投資におけるリスク管理で肝心なのは、投資実行までにいかに細かな工夫を行えるかです。投資後は比較的手間がかからない投資方法だからこそ、投資実行まで多少の労力は惜しまないようにしましょう。

 

次回は、ソーシャルレンディングをとりまく課税や法の事情について解説します。

 

<POINT>
・過去3年間の貸し倒れ率は0%
・貸し倒れが起こる前提で投資を行う
・担保、保証の有無に注意しよう

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