近年急速に数を増やす「不動産案件」を扱う事業者
個人投資家が企業の融資に関わることができるソーシャルレンディング。実際にはどのようなファンドがあるのでしょうか。今回は、不動産から海外ローン債権まで、ソーシャルレンディングの投資テーマをご紹介します。
2013年には数社しかなかったソーシャルレンディング事業者も現在は22社と、近年急速に数を増やしています※1。中でも多いのは不動産案件を扱う事業者。国内におけるソーシャルレンディング事業者のうち、6割超もの事業者が不動産案件を取り扱っています。
※1 2017年6月初旬時点
不動産特化型の事業者にはそれぞれ特徴があります。国内初の不動産特化型クラウドファンディングサービスであるオーナーズブックは、首都圏のマンションやオフィスを中心にファンドを組成しています。また、海外不動産に特化したサービス、ガイアファンディングは、主にアメリカの不動産担保付き案件を紹介しています。ひとえに不動産特化型といえども様々な特色の事業者があるのです。
ペルーの小口債務者に投資するユニークなファンドも
海外に特化したソーシャルレンディング事業者の中でも特徴的なのがクラウドクレジット。同社の看板商品である「ペルー小口債務者支援プロジェクト」は非常にユニークなファンドです。
当ファンドは、日本の個人投資家から集めた資金で、ペルー現地の地方銀行から延滞しているローン債権を額面の数%の金額で購入します。債権の回収は現地パートナーである大手のサービサーが行い、債務者に対して返済相談や減免交渉などの適切な方法で回収を図ります。
現地には悪質な取立て業者も多く、その強引な手法に苦しんでいる債務者が多数いるとのことですが、当ファンドを通じて、そのような悪質業者から債務者を守ることができます。適切に交渉をしながら、購入価格の1.5倍程度での回収を目指すことで、投資家にリターンをもたらします。
テーマだけを見た安易な投資判断は危険
不動産や海外ローン債権に限らず、昨今は特徴的なファンドも増加傾向にあります。地方創生を目指すソーシャルレンディング事業者であるさくらソーシャルレンディングは、首都圏以外の地方に特化したファンドを提供しています。
太陽光発電や水力発電など再生可能エネルギー案件に特化したグリーンインフラレンディングは、サービス開始から6ヶ月で30億円ほどの金額を集めるまでに成長しています。多数の事業者が参入したことで、各社が独自の色を打ち出し、それによって投資家の選択の幅が広がっています。
ファンドテーマが増えていることは投資家にとっても業界にとっても喜ばしいことです。これまでのソーシャルレンディングは国内の不動産案件が多く、どうしても資産ポートフォリオに偏りが生じやすい状況でした。現在は、事業性資金や再生可能エネルギー、さらには海外案件とテーマが増えており、リスク分散もしやすくなっています。
分散投資は大切ですが、テーマだけを見て安易に投資判断することはオススメできません。そのファンドがどのようなスキームなのか、どのような担保が設定されているのか、運営事業者はどのような会社なのかという観点を常に持ち、多角的に検討しなければなりません。さらにテーマ固有のリスクについてもしっかりと確認することが重要です。
例えば太陽光ファンドの場合、電気の固定買取価格が大きく引き下げられると、市場全体が冷え込みファンドのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。海外のファンドであれば、法改正により貸出金利の上限が変更になり事業自体の存続が危ぶまれるケースや、為替変動によって損失が生じる場合もあります。
ファンドテーマごとに、どのようなリスクが存在するのかは、ファンド募集ページや契約書面に記載してあります。新たなテーマのファンドを検討する際には、必ずそれらのリスク事項を確認してから投資を実行するようにしましょう。
次回は実際にデフォルトが起こってしまったらどうなってしまうのか、過去の実績になぞらえて解説します。
<POINT>
●不動産案件を扱う事業者が多い
●途上国のローン債権へ投資するユニークなファンドも
●新たなテーマのファンドに投資する場合は固有のリスクを確認しよう