今回は、ソーシャルレンディング投資の課題について見ていきます。※本連載では、ソーシャルレンディングに特化した国内唯一の専門メディア「クラウドポート」代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏が、急成長するソーシャルレンディングの最新事情をご紹介します。

金融商品取引法と貸金業法にまたがったビジネスモデル

ソーシャルレンディングは資産運用したい個人から集めたお金を大口化し、お金を借りたい企業に融資するという仕組みで、投資家から資金を集めることを規制する金融商品取引法と、投資家から資金を集めることを規制する貸金業法にまたがったビジネスモデルです。

 

ソーシャルレンディング事業を運営するには、この2つの法律に基づいたライセンスを有する必要があります。しかし、これらの法律は、規制対象をソーシャルレンディングとして想定して作られているわけではありません。規制により、投資家へのデメリットが生じている現状もみられます。

借り手企業の詳細が「非開示」のため、透明性に課題

現在、ソーシャルレンディングでは借り手企業の詳細を開示できません。投資家が借り手企業の詳細を知った上で投資すると、実質的には投資家個人が借り手企業へ融資を行なっている状態とも受け取れます。

 

原則として、企業へ融資を行う際には貸金業者としてのライセンスが必須です。個人が借り手企業に直接融資をしているとも取れる状態は、違法となる恐れがあるとの懸念から、当局が融資先匿名化の指導を行なっているのです。また、借り手企業に貸し倒れや返済遅延などが起こった際、投資家が自ら取り立てを行ってしまう可能性も否めません。

 

こうした懸念の一方、融資先匿名化を投資家側から見ると、また違った課題が見えてきます。現在、投資家が頼りにできる借り手企業の情報は、ソーシャルレンディング事業者が公開しているものに限られます。万が一、事業者が匿名性を不正に利用し、意図的に募集時の内容と異なる業種の企業に対して融資を行っていたとしても、それを事前に見抜く術はありません。

 

そのため、情報の透明性が損なわれることとなり、投資家保護をうたう金融商品取引法の思想と反する状態に陥っています。今後、ソーシャルレンディングの健全な発展に向けた包括的な対話が求められます。

株式投資やFX等と異なり、分配金には総合課税が適用

投資信託や株式投資など投資商品の売却益は、分離課税に該当するケースが多くみられます。分離課税では、収入の種類ごとに所得税を計算します。例えば会社員として給与を受け取っていた場合、投資で得た収益と給与はそれぞれ別に所得税の計算を行います。給与額などと投資税率は相関しないことが特徴です。加えて、分離課税は税率の上限が決められています。大きな額を運用するほどメリットが大きい制度と言えます。

 

一方、現在のソーシャルレンディングは、総合課税となっています。総合課税では収入それぞれの所得を合算し、各種控除額を引いた金額に、所定の税率を掛け合わせて所得税を計算します。給与額などを合算した金額に対して、税率が決まる上、累進課税のため、給与額に比例して税率も高くなってしまいます。

 

株式投資やFXなどと異なり、ソーシャルレンディング投資は収益を少しずつ積み立てるタイプの投資商品です。こうした投資商品では収益に対するコストの比率が高くなってしまいます。ソーシャルレンディングが分離課税となることを期待する投資家も少なくありません。

 

ソーシャルレンディングはまだ発展途上の金融商品です。ソーシャルレンディングが資産運用の選択肢として広まり、資金が社会に循環されるよう、今後の法及び税整備に期待したいところです。

 

最終回の次回は、ソーシャルレンディングの魅力と今後の展望について見ていきます。

 

<POINT>

●2つの法律にまたがったビジネスモデル

●融資先匿名化の功罪

●分配金は総合課税

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