借り手と貸し手をオンラインでマッチングするサービス
昨今、ソーシャルレンディング市場は急成長を見せており、2014年では143億円であった市場規模(流通額)は、2015年には310億円となり、2016年にはさらに1.7倍の533億円となっています(クラウドポート調べ)。
なぜ、ソーシャルレンディングはここまで急成長できているのでしょうか? 実はその背景に「高い利回り」と「低い貸し倒れ(デフォルト)率」があるのです。本連載では、ソーシャルレンディングの現状とそれを取り巻く環境、またソーシャルレンディングの展望を基本から解説していきます。
そもそもソーシャルレンディングとは、一体どのようなサービスなのでしょうか? 一言で説明すると、ソーシャルレンディングとは「お金を借りたい会社(借り手)と、お金を運用して増やしたい人(貸し手)をオンラインでマッチングするサービス」です。
これまで企業への融資は、主に銀行が担ってきました。その一方で、銀行は独自に厳しい審査基準を設けており、その基準を満たさない企業は、たとえ財務的に健全であっても融資を受けるのが困難という状況がありました。そんな中、インターネットを活用して、銀行やノンバンクが対応しきれていなかった健全な中小企業と、資産運用をしたい個人をマッチングすることで新たな市場を生み出しているのがソーシャルレンディングです。
ソーシャルレンディングは、近年よくメディアでも話題になるFintech(フィンテック)領域において、今後、中核を担う分野とも言われており、実際に2015年度のFinTech市場は、ソーシャルレンディング(融資)とクラウド型会計ソフトが牽引したとも言われています。(参照:https://www.yano.co.jp/press/press.php/001651)
「高い利回り」と「安全性」を兼ね備える
前述の通り、ソーシャルレンディングの魅力は「高い利回り」です。実際に、ソーシャルレンディングのファンドにおける平均利回りは2016年上半期で8%(年利:税引前)と、非常に高い数値になっており、過去2年間(2016年末時点)の利回りも上昇傾向にあります(クラウドポート調べ)。
また、ソーシャルレンディングは「安全性」という点でも魅力があります。アクティブに募集している主要18業者において、過去3年間の貸し倒れ(デフォルト)は0%であり(2016年末現在)、この点からも比較的安全な資産運用だと言えるでしょう。
比較的低いリスクにもかかわらず、利回りが上昇傾向にあるのは、参入企業が増加したことで競争が激化し、顧客獲得のために自社マージンを放出していることも一因であり、投資するには今が絶好のタイミングとも言えます。
一般的なソーシャルレンディングの利回り構造は、「借り手への貸出金利−事業者のマージン=借り手の利回り」となっています。例として、借り手に13%程度の金利で貸し出し、事業者が5%程度のマージンを取ると、投資家は8%程度の利回りを受け取ることができます。事業者のマージンを低くすると、連動して投資家の利回りが増えるのです。
配当型の「手間がかからない」商品
ソーシャルレンディングのもう一つの魅力は「手間がかからない」という点にあります。株やFXと異なり、ソーシャルレンディングは元本の価格変動があるわけではないため、相場をずっと見ておく必要がないのです。
デイトレードやFXでは、トレーダー相手に相場を読む必要があり、パフォーマンスが知識や才能に依存します。また、不動産経営なども知識や情報ネットワークがある投資家とそうでない投資家とでは、パフォーマンスに大きな差が生じます。
その一方ソーシャルレンディングは、期間毎の配当(毎月や毎四半期などファンドにより異なる)があり、償還予定日になると投資元本が返ってきます。元本の価格変動がなく、玄人と未経験者のパフォーマンスに差がつきにくい商品なのです。実際、ソーシャルレンディングの投資家の中には、FXやデイトレードなどの「変動が大きい」金融商品で損を被ってしまい、より手間が少なく安定した利益を得られる投資を求めてたどりつくという人が多数見られます。
このように、ソーシャルレンディングでは利回り・安全性・手間という点で良いことばかりが見えてきます。しかし、なぜこのようなことが成り立つのか。逆にどのようなリスクがあるのか。次回は「ソーシャルレンディングの仕組み」を紐解いていきます。
<Point>
●ソーシャルレンディングの市場規模は、2016年で500億円に達し急成長をしている
●急成長の背景には、8%もの高い利回りと低い貸し倒れ率がある
●ソーシャルレンディングとは、借り手と貸し手のマッチングである