無駄遣いではない、土地の有効活用のための借入金
私は前述したように相続対策の仕事をやり始めて30年以上になりますが、相談者の多くは長男であるとか娘婿等、実際に財産の管理を行なっている方です。
そして、そういった方はほとんどのケースで我々の提案に賛成していただけるのですが、親から反対されることがよくあります。特に借金する提案が入っていると、その可能性が高くなります。
昔の人は小さい時から「借金はするな!」と口酸っぱく言われて育って来られたでしょうから仕方がないのかも知れません。
もちろん借金したお金を博打に使うとか海外旅行に頻繁に行く、あるいは身分不相応な豪邸を建てるということはあまりお勧めできません。
ところが、例えば土地の有効活用としてのアパート建設資金を借入金で調達することは無駄遣いでも何でもありません。相続税対策になりますし、また収入も増えるのです。当然ながら入居者にも喜ばれます。
もちろん、土地の所在場所によってはアパート経営は相応しくないということはあるでしょうが、借金してアパート経営をすること自体が悪いということには決してなりません。
仮に、その家庭にとっての最善策がアパート経営だとして、それに断固として反対することが果たして正しいのでしょうか?
私は前回「借金がイヤで思い切ったことができない」で「借金すれば生きている心地がしない人もいる」という話をしました。
したがって必ずしも強制するわけではありませんが、相続人となる方が立派な方で、是非アパート経営をやりたいということであれば賛成してほしいというのが本音です。
たとえ借金するのが親であったとしても最終的に返済するのは子供です。また実際に相続税を払うのも子供なのです。
もしアパート経営が失敗したとしても決して親を怨むことはないでしょう。むしろ計画に反対して実行できなかった時のほうが怨まれる可能性が高いと言えます。
なお、これとは反対に子供が反対しているのに親が勝手に多額の借金をしてガンガン賃貸物件を建てるということがあるようですが、これはいただけません。
上述したように借金の返済をするのは子供です。にもかかわらず子供の意見を無視して実行しますと家庭崩壊の可能性が極めて高くなります。
適任な後継者がいなければ不動産の売却も検討
資産を承継していくためには当然ながら後継者が必要となります。ところが残念ながら子供に恵まれないとか、子供はいても不動産経営に全く興味がないこともありますし、後継者には相応しくないということもあります。
そのような場合には養子を貰うとか、娘婿を後継者にすることもあります。なお、どうしても適任者がいないようであれば不動産を全て売却することも考慮に入れる必要があるでしょう。
以上、「衰退」する大地主となる原因について解説してきましたが、ここで再度まとめておきます。
<「衰退」する大地主となる原因>
個人では対処が難しいマクロ経済とか国政に起因するもの
①バブルの発生・崩壊
②少子・高齢化の波
あまりにも過酷な不動産オーナーの税金に起因するもの
①時の経過と共に増えていく所得税と相続税
②各種の節税封じ
マンションの寿命と人間の世代間隔のズレに起因するもの
不動産オーナー個人に起因するもの
①財産を平等に分けた
②借金がイヤで思い切ったことができない
③親が相続対策に反対する
④後継者がいない