地主にとって毎年の負担となる所得税
不動産はご承知のように取得時点では登録免許税や印紙税、不動産取得税等の税金がかかりますし、保有している時は毎年、固定資産税や不動産所得に係る所得税がかかります。
また売却したときには譲渡所得税、贈与したときには贈与税、相続したときには相続税がかかります。
このように不動産には状況に応じて様々な税金がかかるわけですが、ここでは大地主にとって特に大変な毎年の所得に係る所得税と相続税について解説しておくこととします。
私は以前より不動産賃貸業においては特に所得税と相続税が時の経過と共にドンドン増えていく仕組みになっているので、それへの対応策を早急に構築していかないと大変なことになるということを様々な媒体を通して指摘してきました。
これについては非常に重要なテーマなので最新の情報を織り込みながら再度解説しておきたいと思います。
所得税というのはご承知のとおり累進課税ですから不動産所得が増えればそれ以上に増加していきます。逆に不動産所得が減ればそれ以上に減少していきます。
そこで、まず最初に不動産所得が果たして時の経過に共に増えていくのかどうか検証する必要があります。
不動産所得が増える3つのケースとは?
不動産所得というのは家賃収入から経費を差し引いて求めます。したがって不動産所得が増えるケースとしては次の3つしかありません。
<不動産所得が増える3つのケース>
①家賃収入が増えて経費が減るケース
②家賃収入の増え方が経費の増え方よりも大きいケース
③家賃収入の減り方が経費の減り方よりも小さいケース
※片方が一定というケースは除外
高度成長時代とかバブルの時代には中古物件であろうと家賃を上げることは、それほど難しいことではありませんでした。
ところが、これからの日本は少子・高齢化という流れの中にありますので、この流れを大きく反転させることは難しいと思われます。
実際に空室物件が増加の一途を辿っていますので家賃がアップしていく可能性はかなり低いのではないでしょうか。
※貸ビル等の業務系の物件はその時々の経済状況により家賃が上下に大きく変動します。現在は空室率の低下と共に場所によってはかなり上昇しています。
したがって上記で挙げた3つのケースのうち、①と②は現実的ではありませんので、ここでは③のケースについて具体的に検証してみたいと思います。
支払利息と減価償却費の推移
③は「家賃収入の減り方が経費の減り方よりも小さいケース」というものですが、経費のうち修繕費は建物とか附属設備が古くなってくるとどうしても増加せざるを得ません。
それなのに全体としての経費が減るということは修繕費以外の経費がウンと減少する必要があります。修繕費以外の経費というと、すぐに思いつくのが支払利息と減価償却費です。そこで、これらの経費がどのように推移するのか見ていきましょう。
まず支払利息ですが、支払利息というのは借入金残高に利率を掛けて求めますので借入金の返済と共に減少していきます。そこで私も今までは支払利息の減少を不動産所得が増える主な理由としてきました。
ところが最近の異常な低金利により、この理屈が通らなくなってきたのです。[図表]の「不動産賃貸業における収支計算」をご覧下さい。これは新規にアパートを建てた場合の収支を計算したものです。
支払利息の欄を見ますと、1年目は981千円となっています。ここでは金利を1%として計算していますが、これより低い金利も現実にはありますので、その場合にはもっと少なくなります。
それではここで右側にある減価償却費の欄をご覧下さい。5,100千円となっています。それに比べると支払利息は5分の1にもなりません。なんと可愛らしい数値でしょう。確かに毎年少しずつ減少はしていますが、以前のような存在感は全くありません。
このように支払利息は仕組み上、時の経過と共に少なくなってはいくが、修繕費の増加を打ち消すほどの影響力は無くなりました。
[図表] 不動産賃貸業における収支計算