今回は、どのような土地なら「道路敷設開設」が必要だと認められるのかを見ていきましょう。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。
現実的な「想定分譲図」が描けるかどうかがポイント
前回の続きです。今回は、どのような土地なら「道路敷設開設」が必要だと認められるのか、専門家の見解を見ていきましょう。
<不動産鑑定士の見解>
潰れ地が発生するかどうかの判断は、まずは評価対象地が存する地域の条例等に応じた戸建分譲を想定した時に、合理的かつ現実的な想定分譲図が描けるかどうかによります。
開発想定図の作成に当たっては、「開発指導要綱」等に基づき、特に開発区域内道路の幅員、転回広場の必要性や形状、最低敷地面積等、各分譲地の接道義務(通常2m)に注意します。
さらに、下図のように現実性の観点は重要です。
路地状敷地が何重にも重なる想定図やわずかな開発道路のみの想定図では、それこそ絵に描いた餅です。
開発道路の必要性の判断に迷う場合には、各分譲地の道路との関係位置や形状を考慮した分譲販売価格、開発道路築造費等を考慮した上で、数字による検証を行うことも有効でしょう。これは開発法という鑑定評価手法の一つですが、高く算出されたほうが最有効使用といえるでしょう。
その地域の土地の「標準的な使用方法」も判断基準に
<元国税調査官の見解>
以下のA図においては、路地状開発は合理的でなく、潰れ地が発生するのは明白であるから道路敷設による開発が妥当と思われます。B図においては、路地状開発及び道路敷設開発のいずれも可能であると考えられます。
この場合の判定要素は、評価対象地の「その地域」の標準的使用は何か、また、標準的画地(敷地面積)はどうであるか、という点です。換言すれば、戸建住宅地区だとしても、その地域の開発が路地状開発が多いのか、あるいは道路敷設開発が多いのかで判断することになります。
なお、いずれの開発を施行するとしても各種法令に違反しないことが前提となります。
税理士法人JPコンサルタンツ
代表税理士
昭和46年東京国税局総務部・東京国税局管内税務署に勤務し、主として資産税関係事務を担当。平成8年神田署勤務を最後に退職、同年小林登税理士事務所開設。平成17年税理士法人トゥモロー・ジャパン設立。平成21年JPコンサルタンツ・グループ代表取締役に就任。平成24年待山会計事務所と経営統合を図り、組織再編された税理士法人JPコンサルタンツの代表税理士に就任する。年間100件を超す相続案件を手掛ける。
<主な著書>
『広大地の評価実務Q&A』(中央経済社)、『相続税・贈与税の実務土地評価』(大蔵財務協会)他多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続税対策のために知っておきたい「広大地」の評価事例
税理士法人JPコンサルタンツ 役員税理士
不動産鑑定士
平成10年7月、税理士登録。平成15年3月、不動産鑑定士登録。平成15年4月、税理士事務所開設。同年、有限会社アプレイザル・アルファ設立。平成17年10月、総合士業事務所の株式会社プライムを共同設立。平成18年3月、行政書士登録。平成26年4月、税理士法人JPコンサルタンツと税理士事務所の経営統合により、役員税理士に就任する。その専門性を活かし、鑑定評価及び相続税を中心とする資産税に力を注ぎ、多くの実績を有す。近年は税理士会・新聞社主催セミナー及び任意団体における研修会など、講演活動も精力的にこなす。
<主な著書>
『土地の税務評価と鑑定評価』(中央経済社/共著)、『広大地の評価税務Q&A』(中央経済社/共著)他多数。
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