前回に引き続き、賃貸用の共同住宅が多く建っている土地は、広大地評価を受けられるかどうかを見ていきましょう。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。

賃貸マンションがあってもマンション適地とは限らない

前回に引き続き、賃貸用の共同住宅が多く建っている土地は、広大地評価を受けられるかどうかを見ていきましょう。

 

<不動産鑑定士の見解>

 

いわゆる高級賃貸マンションが存在するごく一部の地域を除き、賃貸マンションの存在をもって直ちにマンション適地、広大地補正率の適用不可と判断するのは早計と考えます。

 

相続税評価及びその価額は、「特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とし、「所有権価格市場」を基礎としています。

 

賃貸マンションの多くは、土地所有者の土地の有効活用の観点から建設されたものであり、土地取得に資本投下がなされておらず、建物建築費に対する利回りで建築計画が検討されておりますし、戸建分譲は有効活用の選択肢にも入っていないでしょう。

 

また、混在地域において、戸建分譲業者やマンション業者と競合した上で、新たに土地から取得して賃貸マンションを建設するものは稀でしょう。

 

中古賃貸マンション市場もありますが、その需要者は投資として収益性を重視して取引されるものであり、それは収益性の観点から形成される市場です。

 

したがって、分譲マンションの素地市場と中古賃貸マンション市場は需要者の属性が異なることから、賃貸マンションの存在が直ちに広大地補正率の適用不可との判断にはならないと考えます。

マンション適地等の考え方に「明確な定義」はない!?

<元国税調査官の見解>

 

マンション適地として、広大地の評価の適用はないと判断します。マンション適地等の考え方は、評基通及び16年情報・17年情報においては、その明確な定義は設けられていません。

 

現行での取り扱いでは、国税庁の質疑応答事例集にあるとおり、「中高層には、原則として地上階数3以上」のものが該当し、「この集合住宅には、分譲マンションのほか、賃貸マンション等も含まれます。」とされているとおり、分譲マンションであっても、賃貸マンションであっても差異はなく、マンション適地等に含まれると解釈されています。

 

ただし、内部の意見の中にも、最有効使用(収益性)の観点から賃貸マンションが存立するのは、ごく一部の地域に限定されるため、分譲マンションのみだけがマンション適地等であるという考えもあります。

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

小林 登,佐藤 健一,三上 満,斎藤 六郎,安田 修

法令出版

広大地の評価の適用を受けられるかどうかで、納税額に大きな差が出ます。しかし、広大地の評価に当たって適用される法律(建築基準法、都市計画法)を駆使し、かつ複雑になりすぎた評価通達を踏まえて評価額を算出することは、…

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