今回は、賃貸用の共同住宅が多く建っている土地は、広大地評価が受けられるかどうかを見ていきましょう。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。

農地と賃貸用共同住宅が混在しても、広大地評価に

Q:私の父が所有している畑は市街化区域にあります。この地域は、最寄りの駅から20分くらい離れています。地元の農家の人が、下図のとおり農地を宅地にし、主として3階建ての賃貸アパートを建築しています。周辺は農地と賃貸アパートが多くあります。このような土地の評価を行うに際して、広大地の評価の適用はできるのでしょうか。

 

 

<回答>

 

広大地の評価はできると判断します。

収益性だけではなく、居住環境なども含めて判断される

<評価担当者の見解>

 

国税庁・質疑応答事例「広大地の評価」の「5.広大地の評価における『中高層の集合住宅等』の範囲」において、《「中高層」には、原則として「地上階数3以上」のものが該当するとし、「集合住宅等」には、分譲マンションのほか賃貸マンションも含まれる。》とされています。

 

しかし、これに対する反論として、周辺のマンションが分譲された区分所有マンションではなく、ほとんどが賃貸用のアパート・マンションなどの共同住宅の場合の判断です。

 

その地域が商業系地域か住居系地域か等の判断を求められますが、その地域が住宅地域である場合には、収益性の観点だけではなく、居住環境や快適性、安全性、利便性なども含めて総合的に最有効使用を判断します。

 

つまり、利用を前提とした収益性のみの判断ではなく、取引も考えての判断になります。

 

最有効使用の判断が戸建住宅用地であっても、収益価格からの算定では賃貸マンション等の共同住宅となることがあります。一般的に広い土地に建物を建築し賃貸する場合、戸建住宅を数棟建てて賃貸するよりも、アパートなどの共同住宅を一棟建てた方が収益性からみて有利な場合があります。

 

評基通の評価の原則1(2)において「・・・不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価額・・・」と規定されているとおり、財産評価の基本は、取引を前提としているようです。

 

したがって、賃貸用のマンション建築が最有効使用となるためには、周辺地域で購入された土地に賃貸用マンションが建築されている特殊な地域に限定されてくると思います。現在そのような地域は、高額の賃料が見込めるような都心の中央部などの一部に限られてきます。

 

以上の様な理由から、住宅地において賃貸用の共同住宅が存在するからと言って、マンション適地とは言えません。

 

この話は次回に続きます。

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

小林 登,佐藤 健一,三上 満,斎藤 六郎,安田 修

法令出版

広大地の評価の適用を受けられるかどうかで、納税額に大きな差が出ます。しかし、広大地の評価に当たって適用される法律(建築基準法、都市計画法)を駆使し、かつ複雑になりすぎた評価通達を踏まえて評価額を算出することは、…

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