今回は、マンション適地の可能性がある土地は、広大地評価の適用が可能かどうかを見ていきます。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。
マンション適地等への移行地かどうか、判断は難しい
Q:私の所有する雑種地(月極駐車場として使用)は、私鉄の駅から徒歩約5分のところにあります。1,000㎡の広さがあり、ハウスメーカーが賃貸マンションの建築をひっきりなしに勧めに来ています。この土地について広大地の評価はできるのでしょうか。最近、この地域にはマンションが多く建てられはじめましたので、土地の利用がマンション敷地としての利用に移行しているようにも思います。
<回答>
マンション適地に該当するかどうかは大変重要な問題です。マンション適地等への移行地かどうかの判断は非常に難しく、不動産開発業者、建築士、不動産鑑定士等に判断してもらうのが良いと考えます(税理士が判断する枠を超えていると思われます。)。
場合によっては、広大地の評価の適用を受けず申告をし、更正の請求を行いマンション移行地かどうかの判断を、税務署に求めることも必要かもしれません。
専門家の間でも判断は分かれる…更正の請求の準備を
<評価担当者の見解>
マンション適地に該当するかどうかの判断は、非常に難しいと思います。机上で、いくら道路開設が必要となっても、マンション適地に該当しますと広大地の評価はできません。
マンション移行地かどうかは、広大地の評価の中では一番難しいのではないかと思います。マンション敷地へ移行しているということですので、マンション適地等としての判断になるかもしれません。
しかし、広大地の評価の判断は難しく、専門家と言われる人の判断と国税庁(税務署)の判断が異なることも数多く散見されます。
第4章に、裁決事例の要旨のうち執務に役立つだろうと思われるものを掲載させていただきました(本書籍をご覧ください)。この要旨を見ても分かるとおり、一番争いの中心になるのがマンション適地等の判断についてです。
したがって、当初申告では通常の評価を行い、申告期限経過後、直ちに更正の請求を行うことも考えておく必要があります。
この話は次回に続きます。
税理士法人JPコンサルタンツ
代表税理士
昭和46年東京国税局総務部・東京国税局管内税務署に勤務し、主として資産税関係事務を担当。平成8年神田署勤務を最後に退職、同年小林登税理士事務所開設。平成17年税理士法人トゥモロー・ジャパン設立。平成21年JPコンサルタンツ・グループ代表取締役に就任。平成24年待山会計事務所と経営統合を図り、組織再編された税理士法人JPコンサルタンツの代表税理士に就任する。年間100件を超す相続案件を手掛ける。
<主な著書>
『広大地の評価実務Q&A』(中央経済社)、『相続税・贈与税の実務土地評価』(大蔵財務協会)他多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続税対策のために知っておきたい「広大地」の評価事例
税理士法人JPコンサルタンツ 役員税理士
不動産鑑定士
平成10年7月、税理士登録。平成15年3月、不動産鑑定士登録。平成15年4月、税理士事務所開設。同年、有限会社アプレイザル・アルファ設立。平成17年10月、総合士業事務所の株式会社プライムを共同設立。平成18年3月、行政書士登録。平成26年4月、税理士法人JPコンサルタンツと税理士事務所の経営統合により、役員税理士に就任する。その専門性を活かし、鑑定評価及び相続税を中心とする資産税に力を注ぎ、多くの実績を有す。近年は税理士会・新聞社主催セミナー及び任意団体における研修会など、講演活動も精力的にこなす。
<主な著書>
『土地の税務評価と鑑定評価』(中央経済社/共著)、『広大地の評価税務Q&A』(中央経済社/共著)他多数。
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