前回に引き続き、戸建住宅と分譲マンションが混在する住宅地は、広大地評価の対象となるかどうかを見ていきます。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。

容積率300%の地域は、原則としてマンション適地等に

前回に引き続き、戸建住宅と分譲マンションが混在する住宅地は、広大地評価の対象となるかどうかを見ていきます。

 

<元国税調査官の見解>

 

この地域は、広大地の評価の対象となると判断します。いわゆる評価対象地が、マンション適地等(中高層の集合住宅等の敷地用地)か否かという問題は、その土地の最有効使用、つまり標準的使用は何かという問題に帰結します。換言すれば、経済社会、行政的見地から判断することになります。

 

16年情報及び17年情報でも「・・・戸建住宅とマンション等が混在する地域(主に容積率200%の地域)は、最有効使用の判定が困難な場合もあることから、このような場合には、周囲の状況や専門家の意見から判断して、明らかにマンション等の敷地に適していると認められる土地を除き、広大地に該当する。」と言っています。

 

ここで言う「明らかに」を調べてみますと“はっきりしていて疑う余地のないさま”と書いてあります。

 

したがって、「混在」の包含的解釈は「その地域」の過半数がマンション敷地であったとしても、その地域がマンション適地等と判断されることではありません。

 

なお、容積率が300%の地域は原則としてマンション適地等となります。したがって、容積率が300%以上の地域であると、仮に戸建住宅が過半数を占めていたとしても、この地域はマンション適地等になります。

相続した土地が、マンション適地等に該当した事例

平成21年12月15日裁決(裁決事例集No.78-432頁)

 

相続により取得した土地は、いわゆるマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当しないとした事例

 

請求人らは、請求人らの一人が相続により取得した本件土地(1,075平方メートル)の最有効使用は、本件土地が存する本件地域の状況及び本件土地の個別的要因を考慮すると、中高層の集合住宅等の敷地として利用することなく、建築資金が小額でリスクの小さい戸建住宅の敷地として利用することである旨主張する。

 

しかしながら、本件地域では、①平成X年にその用途地域が住宅地域から近隣商業地域に変更され、建ぺい率は80%、容積率は300%と中高層の集合住宅等を建設することが可能であること、②平成X年以降、市に対して開発許可申請がなされていないことから、1,000平方メートル以上の土地について開発行為をした場合に公共公益的施設の負担が必要な開発は行われていないこと、③本件相続の開始以前10年間において、戸建住宅よりむしろ中高層の集合住宅等が多く建築されていることが認められる。

 

次に、本件土地についてみると、本件土地の形状、接面道路の幅員、本件土地と接面道路との接する距離、接面道路と県道・国道との距離に加えて、容積率が300%と定められていることなどからしても、本件土地に中高層の集合住宅等を建築することに特段の支障を来す状況は見受けられない。

 

なお、平成10年8月には、本件地域内の約830平方メートルの土地に11階建の事務所ビルが建築されており、本件土地と同規模の土地が細分化されることなく一体として利用されている。

 

以上の事実を勘案すると、本件土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の用に供することではなく、中高層の集合住宅等の敷地の用に供することであると認められる。したがって、本件土地はマンション適地等に該当するので、財産評価基本通達24-4に定める広大地に該当するとして評価することはできない。

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

小林 登,佐藤 健一,三上 満,斎藤 六郎,安田 修

法令出版

広大地の評価の適用を受けられるかどうかで、納税額に大きな差が出ます。しかし、広大地の評価に当たって適用される法律(建築基準法、都市計画法)を駆使し、かつ複雑になりすぎた評価通達を踏まえて評価額を算出することは、…

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