前回に引き続き、ペルーの二輪車マーケットの現況を見ていきます。※本連載は、公認会計士・税理士で、久野康成公認会計士事務所所長、株式会社東京コンサルティングファーム代表取締役会長の久野康成氏が監修した『新興国ビジネス業界地図』(TCG出版)から一部を抜粋し、激変する新興国市場のうち、特に注目したい4カ国の現状と今後の動向予測を見ていきます。

韓国や中国を中心に、FTAに積極的なペルー

ペルーは、韓国や中国を中心にFTAを積極的に行っている。韓国はFTAを通じてペルーの自動車市場の獲得を目指す。

 

現在は、23%のシェアを確保しているがFTAが進行すれば、シェア拡大は非常に容易であろう。世界的に評価を得ている日本の自動車産業でさえ、今後、安心はできなくなる。日本企業は市場拡大を目指すため、FTAを積極的に取り組むべきである。

 

ペルーには豊富な資源があり、鉱工業分野では特に強みがある。日本にとっては非常にポテンシャルの高い市場であるといえる。

 

ペルーのビジネス環境に目を向けた場合、関税問題のみならず、知的財産の保護、ビジネス環境の整備、さらに、各国との競争条件を把握する必要があるなど日本企業にとって今後大きな問題となるであろう。

 

在ペルー日本企業の多くが加盟する日秘商工会議所は、在ペルー日本大使館や経済産業省等に対して日本・ペルーEPA交渉の早期開始を要望しているところである。

 

税金の優遇措置を活用する「ホンダ」

<注目企業の各国戦略1>

 

ペルーはAPECや太平洋同盟に参加し、太平洋沿岸にはリマなどの主要都市があるが、この沿岸地域にはフリーゾーンがない。物流コストや税負担を抑えた物流拠点などを誘致するためには地の利を生かした優遇措置が必要となるが、現状では国内にはこうした優遇措置はない。

 

だが、ペルー北東部のロレト州やアマゾナス州などアマゾン地域では、経済活性化や雇用促進、企業誘致のため、進出企業に対して付加価値税(18%)を免除する優遇措置がある。この措置を活用しているのが、二輪車・四輪車メーカーのホンダだ。

 

同社はこの地域でオートバイを生産しており、同措置の適用を受ける数少ない例である。ちなみに、同地域でオートバイを生産するのは、地域の主な移動手段が自動車ではなくオートバイであり、国内最大の市場であるためだ。

コロンビアの地方活性化に協力する「ヤマハ」

<注目企業の各国戦略2>

 

ヤマハ発動機は、1997年、3月3日、南米コロンビアに、二輪車のサービス技能と修理工場経営の習得を目的とした技能訓練校(Instituto Tecnico Yamaha)を開校した。

 

勉学意欲が高いにもかかわらず、就業、就学の機会の少ない若者に対して、インコルモトスが所有するサービス研修施設、スタッフおよび基礎技術を提供して技能者を養成することを目的としたものである。

 

開校した背景には、コロンビアの知事より地方活性化の協力要請があった。都市部では産業の発達に伴い雇用機会にも恵まれているが、地方ではそれほど多くはないことが要因である。現地の人々からの要請があるというのは現地でのビジネスが認められているということの証であり、現地でのさらなる発展に繫がっていくであろう。

「二輪車のフロンティア」と呼ばれる中南米地域

<久野国際経済研究所による今後の展望>

 

ペルー、コロンビアはどちらも二輪車が普及し始めるといわれる1人当りのGDP1,000USドルをはるかに超え、ペルーが6,458USドル(2014年、IMF)、コロンビアが8,075USドル(2014年、IMF)で、すでに自動車の普及期に入っている。

 

中南米地域は東南アジアに匹敵する人口と経済発展を遂げているにもかかわらず、二輪車の普及率が極めて低いため、アフリカとならんで二輪車のフロンティアと呼ばれている。

 

近年は、両国での現地生産も盛んに行われるようになり、今後は国内需要だけでなく、中南米の成長マーケットと太平洋同盟などの経済共同体を視野に入れた二輪車産業の発展が見込めると思われる。

 

2011年にホンダとの合弁を解消してグローバル戦略を強めるインドの二輪車メーカー最大手ヒーローモトコープは、バングラデシュに次ぐ海外進出先をコロンビアに決め、2015年より現地工場で生産を開始しており、インド二輪車メーカー初の南米での現地生産となった。

 

ヒーローモトコープは中南米地域への輸出を積極的に進めてきたが、今後はコロンビアを生産拠点として中南米地域でのさらなる飛躍を狙う。

新興国ビジネス業界地図

新興国ビジネス業界地図

久野 康成

TCG出版

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